1979年6月、麥書房から刊行された田中清光による八木重吉研究書。1969年版の改訂版。
私がはじめて「八木重吉」という小文を発表してから、十年になる。重
吉の詩に最初に出会ったのは、それよりもさらに十年ほど前のことであった。このあいだの付き合い方には、まことに長い杜絶があってみたり、熱中があったり、文字どおり断続的であった。
ただ私には、その詩が、信仰告白の証しであるかのようにのみ、多く受け取られていることに始めから不満をもっていた。
ところで一方、私にとって、八木重吉について書くということは、じつはどうしても一度は切開をしてみなければならない、重苦しい部分をひらくことでもあった。それは日本人である私に伝えられた、沈黙に閉ざされている、それでいてないがしろにできない不明の部分を知ることでもあったのである。
重吉の文学に、みえない、〈彼方〉からのしかかってきていたはずのもの、このような側面が不問に付されてきた詩史の欠落は、私には他人事とは思えないのである。
(「おわりに」より)
目次
はじめに
八木重吉論
- 1詩と信仰
- 2孤立の意味するもの
- 3キリスト教・日本への移入
- 4露風と重吉の詩
- 5生涯の選択
- 6信仰の問題
- 7文学への出発 重吉の詩の範囲
- 8『秋の瞳』と前後の詩
- 9『貧しき信徒』と前後の詩
- 8詩史のなかの位置 註 重吉の信仰
八木重吉傳
八木重吉年譜
おわりに
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