1963年10月、思潮社から刊行された鮎川信夫(1920~1986)の詩論集。牧野書店版(1955年)の改訂版。
目次
第一部 現代詩とは何か
- 序章
- 現代詩の特徴
- 歌う詩から読む詩へ
- 今日の詩人がおかれている状況
- 内部と外部をいかに調整するか
- 本書の目的
- いかに書かれているか
- 詩の法則は制作上の助言
1 詩に何を求めるか――現代詩の諸傾向
- ポオおよびマラルメの言葉とオーエンの言葉との対照
- 詩人の態度と技術
- 現代詩の社会的効用の不安定性
- 詩への信頼感の喪失
- 時代の変化について
- 今日の詩の傾向
- さまざまな類似と対比――詩に何を求めるかの相違
- ひとつの結論
- 内面的自由と外面的拘束
- 二つの方向
- 批評が実作を省みることの必要
- 「詩とは何か」への序(註)
- 白秋の「邪宗門秘曲」のつまらなさ
2 詩とは何か――光太郎、朔太郎、順三郎について
- 自由詩以後
- 高村光太郎の言葉
- 詩人の人生観、世界観からの応答
- 西脇順三郎の言葉
- 詩的動機の説明
- 習慣伝統の破壊について
- ダダ、シュルレアリスムの文明観との関連
- 詩的表現の領域の拡大
- 萩原朔太郎の言葉
- 「自然」の変形論者
- 高村光太郎と萩原、西脇との比較
- 批判型と逃避型
- 「根付の国」について
- 感情の衝迫力
- 「危機の時」(「真珠湾の日)――特別な場合
- 感情の母胎になるもの
- 萩原、西脇の詩(「艶めかしい墓場」と「夜」)
- 幻覚化された現実
- 詩人の独立――最初の近代的詩人
- 「感傷性」について
- 漢語調の語法について
- 否定的要素の萌芽
- 「悪文の技術」
- 言葉のリズムについて
- 詩と偶然
- 美学、方法論、技術論の確立
- 時代的苦悩への蔑視
- 巨視的宇宙観(微視的自然観)
- 「時」の観念の欠除
- 「詩とは何であったか」(註)
- 詩と倫理や哲学
- 詩と感覚的イメジェリィ論――北園克衛に関連して
- 書斎人の憂爵
3 詩は何の役に立つか――世界を友とするために
- C・D・ルイスの「君たちのための詩」
- 詩人の苦境
- 詩論の受けとり方について
- 楠田一郎の「黒い歌」
- 詩人の社会的孤立
- 三好豊一郎の「囚人」
- <vie>の意味
- 「黒い歌」の言葉の仄き
- 嗜虐的イメジとすぐれた寓意性
- 特殊な用語について(北村、衣更着、長谷川の詩)
- 新しい現実意識
- 不変な要素と可変な要素
- 「何を書くか」
- 「素材」と「方法」、「経験」と「技術」の一致
- 世界を友とするために
- 虚偽との抗争
- 吉本隆明の「その秋のために」
- 過去の詩の非公開性と今日の詩の公開性
- <夜の意味>
- 「廃人の歌」について
- 表現がより自由になったということ
- 個我意識の発展
- 反逆の分子
- 「ランボオ神話」
- エフトシェンコの「バービ・ヤール」について
- 裸の誠実
- 「詩作法」の限界(註)
- 「その秋のために」の構成
- 長江道太郎の所論について
- 感情的真実
第二部 現代詩をいかに書くか
1 詩の言葉
- 日常語と詩の言葉
- 「歩行」と「舞踏」
- 詩になる可能性
- 黒田三郎の「あなたも単に」
- 岩田宏の「感情的な唄」
- 日常の言葉に対するセンス
- 理解と誤解
- 「誰に向って詩を書くか」
- 正確な表現の必要
- 伝達性について
- 生きた隠喩、生きた絵画
- ピアノのキイ
- 技術批評の難かしさ
- 観念語の使用についての注意
- 「ことば」と感情生活
2 直喩について
- 直喩とは
- シェレーの「秋風へのオード」
- 萩原朔太郎の「時計」
- 直喩効果の条件
- 西脇順三郎の「無常」と「旅人」
- 金子光晴の「子供の徴兵検査の日に」
- 直喩の説明性
- 牟礼慶子の「巨人」
- 北村太郎の「地の人」
- 直喩と想像力
- 一般的な心得
- 使い古された直喩
- 実感のない直喩
- 無意味な直喩
- 隠喩への序
3 隠喩について
- 隠喩とは
- 死隠喩
- 「J・アルフレッド・プルフロックの恋歌」
- W・H・オーデンとディラン・トマスの詩
- 直喩と隠喩の比較
- 初期シュルレアリスト
- ピカソの自働筆記の詩
- 「倦怠の見えない嫌悪」
- 非合理のイメジェリィ
- 難解さと隠喩
- 谷川雁の「商人」
- 「難解さ」に対する二つの態度
- 「別の意味に移す」
- 西脇、金子の一行
- 隠喩の含蓄性
- 木原、中桐、高野の作品
- ジャン・ケーロルの作品(象徴と暗喩)
- 「特殊な世界」
- 言葉の再創造
4 主題、題材、素材と技術
- 感情のカタルシス
- 中原中也と立原道造
- 美への憧れ
- 題材に詩的美を仮定する過ちについて
- 人工美
- 新しい技術と変化の時代
- 伊藤尚志の「三人の男」
- 素材の美しさ
- 機械時代――主音と倍音
- 擬人法について
- 行動の「高さ」への感動
- 不確かなものへの抵抗
- 関根弘の「女の自尊心にこうして勝つ」
- 生活にたいするアクチュアリティ
5 映像(イメジ)とリズム
- 歌う詩、考える詩
- イメジとは
- 作像力の必要
- エリオットの「プルフロック」
- 接続詞のない世界
- 田村隆一「十月の詩」
- 吉岡実の「喪服」
- リチャード・エバハートの「癌細胞」
- 卓抜なアイディア
- 北村太郎の「一九五二年のイメージ」
- アリタレーション
- そこにあるもの
- 計算されつくした詩
- リズムについて
- マチネ・ポエティク
- 新しい連想のスペース
- 加島祥造の「沙市夕景」
- 現代詩の韻律
- 谷川俊太郎の「七五の歌」
あとがき