1996年5月、洛西書院から刊行された荒賀憲雄(1932~)の随筆集。装幀装画は天野隆一。
一日、昔の『鳥』の仲間の出版記念会に、集う機会を得ました。
その折、持ち出された八〇年代の古い『鳥』の合本を眺めているうち、自分が参加していた頃の作品も、まとめておかねばならないなと気づきました。
すでに二十六号を数えた『鳥』の歴史もさることながら、空の、どこかではぐれてしまった自分の軌跡も、小さく遺したいからです。
あれから山の詩ばかり書き続け、それはそれで、すでに一冊の本になりましたが、取り残された作品と、山の詩以外の近作をまとめてみました。
あの頃、なりわいの方も忙しかったのですが、当時の世の中も、ひとを押し退けてはばからない風潮や、何となくきな臭い雲行きがあって、それは今も続いています。個人として悩んだ小さな問題も、それらのことと無縁ではなかったのだと思います。
戦後五十年を経て、まもなく新しい世紀を迎えるようですが、この後、どういう時代を眺めることができるのか、ごまめの歯ぎしりのような呟きは、今後もあいかわらず続けていくつもりです。
表紙の装画・装幀を快く引き受けて下さった天野隆一先生には、益々のご健勝とご長寿をお祈りすると共に、厚く御礼申し上げます。『鳥』発行所、洛西書院の土田さんには、今回もお手をわずらわすことになりました。
(「あとがきにかえて」より)
目次
- 巣立ち
- 青山考
- きい子
- 異端の画家たち
- 神々の遊び
- 夫婦は鰯
- 海ゆかば
- 君が代
- ニッポニア・ニッポン
- あくび
- ちっぽけなこと
- 戦友
- わたしが死ぬのは……
- 伊豆の旅から
- 湯ヶ島
- 天城峠
- 下田
- えぞち・みちのく
- でんでら野
- 風車
- 北帰行
- 訪欧襍記
- 屁
- 目
- 音
あとがきにかえて