2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

魚のことば 港野喜代子詩集

1955年、日本未来派から発行された港野喜代子(1913~1976)の第二詩集。装幀は赤松俊子。第一詩集『紙芝居』(1952)以前の未発表のものと、1950年以降に発表された作品の中から選ばれた54の詩篇。 金魚が机の上に身を投げて乾いていた水槽の中では、仲間達…

十字架:創作 山村暮鳥

大正11(1922)年、隆文館から発売された山村暮鳥(1884~1924)の小説。 著者として 一ど書いておくつた跋が何處へかなくなつてしまつたさうだ。いまの自分には再びそれをくりかへして書く勇氣が無い。 また實際にはそんなものの必要もないのである。だから…

水甕座の水 清水哲男詩集

荒川洋治の紫陽社から1975年に発行された清水哲男の第三詩集。第25回H氏賞受賞。 『喝采』(一九六四年・文童社)『水の上衣』(一九七〇年・赤ポスト)につづいて、三冊目の詩集ということになる。 京都での学生時代に書いた十年以上前の古い作品も三篇ある…

氷見敦子全集 詩、散文、書簡、日記

1985年に30歳で亡くなった氷見敦子(1955~1985)の全集。思潮社から1991年に発行された。編集委員は、江森國友、上久保正敏、近藤洋太、添田馨、野沢啓。墓碑が鎌倉霊園にある。 墓標銘 「花の精」幼ないころ見た。夢の匂いが、漂よってきます。 以下、栞に…

明日 佐々木幹郎詩集

2011年、東日本大震災から半年後、思潮社から発行された佐々木幹郎の13冊目の詩集(現代詩文庫含む)。装幀は間村俊一、挿画は三嶋典東。第20回萩原朔太郎賞受賞。 明日いつもと違う匂い明日シクラメンが桃色の花を咲かせて明日放射能の入った 天からの貰い…

私の探照灯 木島始詩集

1971年、思潮社から発行された、木島始(1928~2004)の20冊目の著書となる詩集。 いつしか作品がたまってきていて、既刊の二冊いらいの作品を本で見たいというひとにも、出会うことがあり、わたしは、意を決して一本にまとめようと思った。 しかし、量がか…

見えない地面の上で 高良留美子詩集

1970年、思潮社より発行された高良留美子の第三詩集。装幀はVOUの清原悦志。 この本は「生徒と鳥」「場所」につづく私の三番目の詩集である。この詩集に収めた作品を、私は一九六三年からの六年間に書き、今度本にするにあたってそれぞれの作品に最終的に手…

短篇集 西風の幻の鳥よ 諏訪優 

1972年、彌生書房から発行された諏訪優の短篇集。 これまでにあちこちに書かせてもらった短篇を集め、その中の一篇の題をとって、『西風の幻の鳥よ』という書名にすることにした。 短篇小説というにはあまりにもちいさく、また、詩人のため息のようにはかな…

純粋桃色大衆――空想への迷走 鈴木志郎康

1970年、三一書房から発行された鈴木志郎康の第一評論集。装幀は鈴木悦子夫人。 ここに集めた文章は、私が一九六三年から書いたものの殆どである。その体部分は一九六八年六九年に書いた。私は詩を書く一方で文章を書いて来たわけだが、考えの焦点が定まらな…

空中の茱萸 荒川洋治詩集

荒川洋治の14冊目の詩集(現代詩文庫除く)。1999年思潮社発行。第51回読売文学賞(詩歌俳句賞)受賞。 目次 完成交響曲 眼帯 冬の紅葉 新しい過去 白い胸のイモ 青い畳 私だけの男 文庫 欲望の感激 海老の壁 美川町令嬢 嵐のあとの風の歌 ロングセラー 空中…

帰りなき者たち 天沢退二郎詩集

1981年、河出書房新社から発行された天沢退二郎の13冊目の詩集。 本書は、雑誌「文藝」に一九八〇年一月号から一九八一年一月号まで十二回にわたって連載(一九八〇年十二月号は休載)した連作詩28篇を中心として、これに他紙誌に発表したもの4篇を加え、配…

化石 関口フサ詩集

1984年、あざみ書房から限定250部で出版された関口フサの第三詩集(第一詩集は『火の声』、第二詩集は『形』)。第9回現代詩女流賞候補作品。 化石 薄闇の中では何も見えなかった猫のようにひらいた瞳孔でみつめた先も薄闇がつづいた 薄闇の中で耳を澄す何か…

虹の工場 獅子文六

獅子文六、16冊目の小説。新潮社の「日の出」に連載された(1940)。単行本は1941年、新潮社から。書影は戦後、1961年東方社版(装幀は風間完)。 目次 萱田という街 「レンボー」という店 雪子という娘 前畑といふ靑年 ポーは鳴らねど われは生産戦士 祝い…

少年 清水昶詩集 1965~1969

1969年永井出版企画から発行された清水昶の第三詩集(書影は新装版)。跋文は石原吉郎。 この数年、わたしは青春の神話のなかで迷っていたような気がする。しかし、神話のなかで育ってきた者にとって、それは生の原質となって重く精神の深みに棲みついてしま…