十字架:創作 山村暮鳥

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 大正11(1922)年、隆文館から発売された山村暮鳥(1884~1924)の小説。

著者として

 

 一ど書いておくつた跋が何處へかなくなつてしまつたさうだ。いまの自分には再びそれをくりかへして書く勇氣が無い。
 また實際にはそんなものの必要もないのである。だからどうなつたつて、いいのである。
 唯、一こと言はせてもらふとすれば、いまの自分に欲しいものは、それは山を海へ移すほどの信仰ではない。それほどの健康であるといふことだ。ただ、それだけだ。まことに健康ばかりが美でそして眞理で眞實であるからだ。

 

茨城縣イソハマにて。

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