1979年6月、エコー企画から刊行された生路洋子(1933~)の第5詩集。装釘は大滝俊隆。
文鳥のひなを購入して育てた日々をもとに詩作する それだけならば一冊の本にしてまとめる事など 凡才の私がすれば日常茶飯事か娯楽に見えるだけだからしなかったと思うが 私の日々の背後には家の外に人に語るすべない長年の重みがあった その間詩作しつゝもほとんど前向きの姿勢を失いつゝあった自分に 突然の文鳥のひな育ては 私の小康を得たころと比例したため 新たに生きるということへの実感を強くした その時期七ヶ月間の作品をまとめ この一冊を差し出します この本の原文字はタイプレスで素人の自分が 鳥のえさを一粒づつ拾うようにして打ったものである(「あとがき」)
目次
チル篇
- 小鳥を買わせた一枚のハガキ
- どうしても白文鳥でなければ
- 幼鳥の胃袋
- 鳥も笑うのだ
- 洗面器での水浴
- 生きている実感
- 日の当る台所で
- 信じることのすばらしさ
- 幼鳥のオキテ
- 無力なものの恐ろしさ
- あまり早く真っ白くなるな
- 鳥の表情
- 美
- 手のりの文鳥に思う
- 怒りん坊
- チルの逃げた日
- 五十通の手紙書き
- チルの逃げた日―タ方―
- チルの逃げた日―その後―
鶴松篇
- 日記考
- 再購入
- 羽根を切る
- 歩く鳥
- 甘えん坊
- 仲間を求めて
- 手のひらの揺りかご
- 日々のこと
- 留守番
- 私の目にしか見えない創作
- エリカの花
- ことば
- 宿命
- あの一瞬
- 涙
- 埋葬
- 愛と何故
- 写真のない小鳥
- 花びらの涙
あとがき