1995年7月、ふらんす堂から刊行された八木幹夫(1947~)の第5詩集。挿画は相沢育男。第13回現代詩花椿賞、第46回芸術選奨・文部大臣新人賞受賞作品。
ここへ引っ越してくる以前、ほんの猫の額ほどの借地で畑仕事の真似を一四、五年したことがあった。これらの小品はその時の経験から得られた収穫物だが、大半は化学肥料による栽培だったために、ろくなものはできなかった。しかも土地は酸性化して痩せ細り、有機農法をするには経済政策が貧困で、とどのつまりは雑草との闘いに敗れ、夏の終わりには、さまざまな昆虫たちの楽園となってしまった。今、私の住んでいる空間には、ものの腐敗する匂いもなければ、夏草の草いきれもない。
そんなわけで八百屋の店先へいくと私は懐かしい幻想につかまる。勿論私は果物を作ったことは一度もない。食後のデザートにどうだろう。五月の空に泳ぐ鯉は私の幻想を食べてくれるだろうか。
(「あとがき」より)
目次
- だいこん
- かぼちゃ
- きゅうり
- 葱
- ふき
- トマト
- じゃがいも
- れんこん
- 雑草
- パイナップル
- バナナ
- 枝豆
- 韮
- 隠元
- みょうが
- うり
- 柿
- きのこ
- 林檎
- あけび
- くるみ
- 人参
- 白菜
- かぶ
- らっきょう
- 法蓮草
- 土
- ボイソンベリー
あとがき