1990年2月、詩学社から刊行された山田玲子の第1詩集。
尊敬する友人に、「詩を書きませんか。」とすすめられたのは、一九八五年も近い冬の日でした。私は、この言葉を遠いところで話されていることのように聞いていました。かなり以前、真剣に書くことと向きあっていた時期がありますが、もうそのような日の再来を思うことが出来なくなっていたのです。でも、短いものを書きました。理由はわかりません。書いてみたい、そう思う自分がいたのです。
東京詩学の会に通い、そこで、嵯峨信之先生、齋藤怘先生、猿田長春先生、中崎一夫先生、松下育男先生の御指導をうけました。同じ会で、私たちの席にすわって批評のことばを下さった珍田彌一郎氏からも教えていただいたことを思い出します。『詩学』「研究作品」欄で、選者の方方に育てていただきました。とても恵まれ、幸せであったと思います。
私にとってはじめての、この詩集を編むことが出来ますのも、このようなお教えを、頂けたから、だからなのだとふかい感謝の念にみたされています。
今度は、もう、筆を手ばなすことなく、一人で歩きはじめていかなければいけないと感じます。
詩集の第三部に、「生まれるために」と題して収めた十篇は、今はもう亡くなられた、喜志邦三先生の主宰される「灌木」に所属して書いていた頃の作品から選んだものです。生まれる子どもに捧げる詩集を夢みていた私にとって、子どもが来てくれなかったことは、詩集を作らないことでもありました。
(「あとがき」より)
目次
或る日
- さくら
- 或る日
- 雪
- 抜けおちるからだを抱いて
- なめくじ
- うみねこ
- ひきわたすもの
水筒
- 明日
- 遠ざかる
- 会話
- 水筒
- 子どもは
- 返事
- 崖のうえ
生まれるために
- 遠い国
- 藪のなか
- 幻想的なスケッチ
- 生まれるために その一
- 生まれるために その二
- 生まれるために その三
- 真昼
- ガラス
- 真昼
- おおいかぶさってくる
草
- 草
- 椅子
- 遠景
- 耳
- 目のまえに吹かれて
- 自分でないものが
丘
- 冬の木
- わたしははずれていく
- 病院で
- もはやゲームが
- 改札口
- 私は死を抱きこんで
- 話しながら
- 予報
めざめ
- 鴉
- 樫
- 木は私に
- めざめ
あとがき