2001年5月、編集工房ノアから刊行されたたかぎたかよしの第6詩集。表紙は高田節子。刊行時の著者は明石市在住。
なぜ「夜」だったのか。「夜」としたのは人の何事だったのか。母の死にまつわる「夜」を記した発端があり、以後、身辺の六年を連作として書き続けてきた。所属同人誌『座』『乾河』『幻想時計』の他に、『朝日新聞』『詩学』『COALSACK』『風神』に発表の機会を得た。
昨年、初夏、思わぬ手術入院、晩秋には、看護を頼った妻を失った。選んだ二十五篇は、すべて秋以前に筆にしたものだが、読み返すにつれ、死を知らず「死」と文字とする、生きるに身勝手な表白に唇を噛んだ。不様だった。しかし、消せない。
表紙の『半魚』は、神戸在住の画家高田節子さんの個展で、一目で魅せられた銅版画である。私は、見届け得ぬ半身を隠した「夜」をここに見た。祈りを思った。
(「後記」より)
目次
・夜の指
- 雨の頁
- 夜目にも。
- 箱を組む
- 枝ぶり
- 黒を白と言いくるめて
- 炭の音
- 紙の白さ
- 写真を伏せる
- 人の居た場所
・夜の係累
- 糸の痕跡
- 風を見る
- 虫の声
- 白の印象
- 累が及ぶ
- 約束
- 暮れるまで
・夜の罠
- 人事
- 箱庭
- 二重に見える
- 草に似て
- 反照
- 恢復
- どこに
- 放心
- 蜻蛉
後記