2002年12月、編集工房ノアから刊行された苗村吉昭(1967~)の第2詩集。装幀は森本良成。第5回小野十三郎賞受賞作品。著者は滋賀県生まれ。詩誌「砕氷船」同人。刊行時の住所は滋賀県栗東市。
何となく予感していました。「あとがき」を書き終えたら、あの子の命が終わってしまうのではないか、と。二〇〇二年十月五日早朝、頼知の心臓は止まりました。僕は彼の一日も早い死を切望していました。しかし、慌しく駆けつけて彼の死顔を見たとき、最後の湯浴みをさせたとき、遺体を小さい棺に納め蓋を閉めたとき、火葬場の炉の奥へ棺が消えバーナーに点火したとき、小さい骨を拾って骨壺に入れたとき、僕はどうしても涙を堪えることができませんでした。それは彼の死を悼む気持ちではなく、彼の二七二日間の命の意味を問う悲しみでした。
頼知は死によってしか不自由な肉体から開放されることはなかったのでしょう。ですから、彼はいま、本当に自由になって、小鳥や蝶のように、あちこち飛び回っていることと思います。
(「後記」より)
目次
Ⅰ受胎告知
- コンペティション
- 肉
- クルスク
- コピー
- ゾウリムシ
- エスカルゴ
- 存在理由
- 気象観測気球
- ライフプランニング
- 枯死卵
- ひな祭り
- 蕨取り
- ロマンス・ソン・パロル
- 受胎告知
- キジバト
- スズメ
- ドラマの続き
- 大晦日
Ⅱバース
- 八尋鮫
- HELLP症候群
- バース
- NICU
- ポケベル
- 問い
- 通院
- 飛べない鳥
- 儀式
- オオカバマダラ
- 低酸素性虚血性脳症
- 祈り
- S医師への手紙
- もしあなたが人間であるなら
- 延命治療
- もう一人の僕へ
- サクラ
- 今日も生きたね
生きて「在る」ことの厳然性 森哲弥
あとがき――『夜と霧』を携えて
後記
関連リンク
詩人 苗村吉昭さん(朝日新聞)
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