1984年10月、青磁社から刊行された八代信(1942~2020)の詩集。表紙写真は山形弘善、デザインは内田麟太郎。著者は群馬県下仁田町生まれ。刊行時の著者の住所は中野区新井。
これらは80・81年の作品です。ほとんどが同人誌「方方」に発表したものですが、少々手をくわえたものもあります。
空白になりきってしまったような、存在感のある季節でした。ふたしかであるのに、手にしたものの重さは、手にあまりました。ものみなあるべくしてありました。砂にうもれた杓子も、急流のなかほどにゆれてたちすくむようにいた立ち木も、冬の海の石の音も、みなみな。
ことばにしてしまえば、これだけのもので、そのことのこわさが、このところ増しているように思います。夜がくると、やさしくなって、酒をのみます。なにかをたくわえようと思っていますが。
一九八四年八月一六日
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 旅
- 中空よりうえに
- せまい谷をかぞえて
- 窓にはすべて
- ぼくにあったかつての別れを
- ふたたびころんだ
- 山々はまだ緑で
- くちびるをすこしあけて
- くれないいろの
- 山をおりると弓なりに
- みずうみからのぼる
- 丘の下に川がながれて
- 海辺から
- 岬
Ⅱ
- 日おちてこそ
- 前夜へ
- 路地の説得
- 日にいくたび
Ⅲ
- 閑話休題1
- 2
- 3
- わかれましょう 絶対に
- やさしい日に
あとがき