1972年1月、詩学社から刊行された会田千衣子(1940~)の詩集。
ここにおさめた「鳥の町」「背景のために」「氷の花」は、すでに一冊ずつの詩集になっているが、それぞれの名前のつけかた、短い散文詩形式、主題など、三部作としてひとつにまとまるように書かれていて、『幻禱詩集』として統一、再構成することができたのは、長い重荷を果たしたような気がする。
この閉ざされた文学的な煉獄ともいえる世界は、「氷の花」の最終の三篇によって破られることに導かれた。
これらの詩篇を書いていたあいだ、いわゆるふつうの行分けの詩を書くことにある種の吐き気に似た感じがあって書くことができないでいたが、それは行分け形式の詩には日常饒舌があふれてしまうからだったと思う。なお一冊にまとめるにあたって、若干、訂正したところもある。
この詩集を、行間には現われていない彼女の苦悩のために、その魂を愛したひとたちに贈ろうと思う。
なお「鳥の町」は一九六〇年、「背景のために」は一九六三年、「氷の花」は一九六四年から一九六八年にかけて書かれた。
(「あとがき」より)
目次
第一部 鳥の町
- Mのやかた
- Mの車
- 一日
- 変身
- 仕事に行く
- 中断の後に
- 夏
- Mの嗤い
- 不意に
- アンヌュイ
- 鳥の町
- 笑い
- 胃袋
- 物たち
- 鳥
- 無題
- 町
- 倦怠について
第二部 背景のために
- 体系
- 七年前と
- 失ったもの
- 小さい絵
- 亡命者のように
- 断片
- 仏陀によせて
- 町の別の感受の仕方
- 聖者の町
- 球
- 神秘
第三部 氷の花
Ⅰ
- 天使
- 天使
- 病める子供
- 子供
- すわっている少年
- 町の少年
- 眠る少年
- 神話
Ⅱ
- 彼女
- 少女
- 美神
- 黒薔薇
- Vivre et……
- 聖女
- 死
- 能面の女
- 花をもつ少年
- 予感
- 秋
- 怯える少女
- 狂える少女のうたえる
- 囚われの巫女
- 亡き母に
あとがき