1999年10月、燎原社から刊行された堀川喜八郎(1922~2011)の第6詩集。表紙は小林孝夫。
第二次大戦の終戦後にたどりついた、ビルマ東南部のゼマト工で、わたしは村の人達から「マスター」と呼ばれるのに抵抗感があった。そこで、モエニューと呼んで貰うことにした。モエニューとは、ビルマ西北部のエナンジョンにいた時、兵舎へ物売りにきた、インド系らしい顔立ちの少年の名前である。
とっさに思いついたもので、正確な発音は違うかもしれないが、以来、復員(昭和22年7月)までの二年間、転々と移動先でもモエニューと名乗って、ビルマの人達に接した。いつしか、わたしにとってごく自然な、一体感をもつ名前となった。
村の人達の名前はマウトン、マウセイの二人しかおぼえていない。特にマラリヤでお世話になったおばさん一家の名前を記憶していないのは、発病中とはいえ大変申しわけないと思う。
あれからすでに半世紀以上過ぎているが、今なおわたしの胸にたぎる、ビルマの人びとへの親愛と感謝の思いをこめて、この詩集を編んだ。
(「あとがき」より)
目次
- モエニューをおぼえていますか
- 夜のどこかでトッケが啼いた
- あすの見えない明け暮れに
- ベゴ トアメラ?
- 母系家族
- 草の儀式
- 金の匙
- ノバジャンの森で
あとがき
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