嵐の中の一本の木 真鍋呉夫

 1954年1月、理論社から刊行された真鍋呉夫(1920~2012)の短編小説集。新鋭創作選。装幀は佐藤忠良

 

 戦後八年間の自分の足跡をふりかえるような気持で、私はこの短篇集を編んだ。この集を二つにわけたのは、必ずしもジャンルによる区別を意図しただけではない。「骨を抱いて」を書いて後、約一年の間、私はほとんど作品らしい作品を書くことができなかった。そしてこの一年の間に、偽の講和が発効し、血のメーデー事件が起り、破防法が制定され、民族解放の血路をひらこうとする炭労電産の長期ストライキが起った。私が「人民文学」の文学運動に参加し、若い人たちと一緒に「現在」の会をはじめたのも、この間のことだ。従って、この集のⅠとⅡとの間には、時間的にも文学的にも深い断絶がある。
 私はしかし今、独立と平和のためにたたかう国民の姿にみちびかれて、ようやく新しい未来への出発点に立つことができたような気がしている。
(「あとがき」より)

 


目次

  • 小城二等兵の死
  • 海の虱
  • 骨を抱いて

あとがき


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