1972年10月、ぷろだくと叛乱から刊行された稲木豊実(1949~)の第1詩集。叛乱叢書1。
この詩集は、一九六九年五月から一九七二年五月までの間に書かれた詩篇を編んで一本としたものであり、実質的には私の処女詩集と云ってよい。作品の掲載順序は冒頭の「海の記憶」を除いて、他はすべて発表年月に異動はあるものの執筆順となっている。
いざ詩集をまとめるとなると妙な気分がする。ひどく胸がさわがしい。試験を受けてその結果を待っているような気分だ。それも入社試験や上級学校の入学試験などの、その試験の結果が自身の一生を左右するような……。
最近になって、と云うよりは七〇年終り頃からか、次第に書けなくなっている。それが何を意味しているのかは解らない。ひとつの青春の終りなのだろうか。
とにかく詩集は出さなければならないと思った。このようなものでも私のこれまでの人生の何分の一かをかけたものであり、少くとも私の生きて来た過程を私自身にさし示すものであろう。出さなければ始まらない。しかし、出したあと何が始まるのかは知らない。
(「あとがき」より)
目次
- 海の記憶
- 記憶の五月・疲労の悶え
- 夜明けの憎悪
- 叫ぶのは午後の引き潮・青春の光と影
- かがやく星座
- 少年・その序曲と終曲
- 夜の眼
- 青い世界
- 秋のうた
- さあくるげーむ
- 透明で硬質な徒労の季節
- 水葬もしくは声の階級
- 早春もしくは逃亡
- 夢断ち
- 暗い五月へ
- ブルース
- 殺し屋になろう
- 秋へのノオト
- 夜のひまわり・おわれ夏よ
- さらにうつくしくふゆのはじまりへ
- 冬の階調・らぶちゃいるど
- Where are we now ?
- うるふ
- 寒い国
あとがき