1971年8月、創映出版から刊行された笠井清の作品集。カバー絵は富士井盛文。
この第一集は、還暦を記念してあわただしく出されるもので、それは、長い歳月をなんとなく喰いつぶしてきた怠惰なぼくの姿でもある。詩は二十歳台ころのものが多く、政治と文学のなかで浮き沈みの「傷だらけの青春歌」ともいえる。このほかプロレタリア作家同盟(ナルプ)時代の「石狩川」(ナルプ反戦詩集「防衛」)小説の「千人針」(コップ「大衆の友」)「国家社会主義者」(ナルプ札幌支部機関誌「文学部隊」)「旗」(北方文学)など、懐しいものだが、発禁で掲載本も手許にない。
ぼくは結婚まで、ほとんど放浪していて、京都はじめ関西や四国、中国を歩いた。満州国のハルピンや新京、朝鮮などにも行ったが、死ぬことを考えたりして詩や小説を書いた。政治とも別れがたく、歯ぎしりしてしがみついたこともあった。あれもこれも淡い煙のような過去である。
この還暦記念の集会、作品第一集の出版も、ぼくをとりまく若い親友たちがやり、作品の選択や編集は、すべて江原光太がやってくれた。とくに比良信治、小林勉、内山喜美雄、岩泉常夫など発起人その他各氏に心配をかけ世話になった。心から感謝したい。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 詩
- 海峡
- 冬
- 石狩をわたる風
- 碑に一
- 鴨川抒情
- 友よ
- 北風
- 糀谷町にて
- グランドホテル付近
- 鼻
Ⅱ エッセイ
- 多喜二文学覚え書
- 多喜二のこと
- 本庄陸男氏の断想
- 島木健作を想う
- 中野重治について
- 高橋新吉のこと
- 文学碑の周辺とその状況
- 全逓文学者の回想
- 北海道文学とは何か
- 北方的といふこと
- 地方文学・文化通信
- 『北方文学」のことども
あとがき
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