詩歌と戦争 白秋と民衆、総力戦への「道」 中野敏男

 2012年5月、NHK出版から刊行された中野敏男(1950~)の評論集。NHKブックス1191。刊行時の職業は東京外国語大学教授。


目次

序章 震災から戦争へ揺れた心情の経験 詩人と民衆の詩歌翼賛への道

  • 震災から戦争へ進んだ時代の詩歌曲の記憶 
  • 震災後の愛国主義と抒情詩人の行方 
  • 民衆の自発的文化運動と詩歌翼賛
  • 白秋の軌跡/民衆への広がり

第一章 抒情詩歌の成立と本質化される郷愁 日本製郷愁の二つの問題構成

第一節 北原白秋における郷愁という問題

  • 郷愁というモチーフ 
  • 郷愁の二つのかたち

第二節 大正期の童謡運動と白秋の唱歌批判

  • 童謡制作の開始/郷愁との再会 
  • 童謡運動と唱歌批判

第三節 唱歌による規律/郷愁を「吹き込む」

  • 唱歌による規律 
  • 外国産の郷愁 
  • 官製郷愁としての「故郷」 
  • 唱歌による国民の訓育

第四節 童心主義と本質化される郷愁

  • 童心主義という対抗戦略 
  • 本質化される郷愁
  • 社会化された民衆
  • 大正デモクラシーと童心主義

第五節 「からたちの花」の時間構成

  • 時間次元の作品構成 
  • 郷愁の時代への接続

第二章 民衆の植民地主義と日本への郷愁 傷を負った植民者のナショナリズム

第一節 童心主義の成立と小笠原体験

  • 白秋生涯の危機 
  • 童心と小笠原体験の落差

第二節 外来者の二つの傷とその癒し

  • 最初の小笠原体験記 
  • 第二の小笠原体験記 
  • 癒しとしての「童心」/本質の「発見」

第三節 民衆の植民地主義と流浪する心情

  • 二つの流行歌 
  • 「移住」の時代 
  • 初期の労働移民
  • 植民地主義と民衆の移住熱
  • 朝鮮民衆の抵抗と植民者民衆の不安
  • 民衆の植民地主義と郷愁の抒情

第四節 震災前後の童謡・民謡と本質化される「日本」

  • 新しい「日本の童謡」 
  • 明治の民謡ブームと民衆のナショナリズム 
  • 白秋の新民謡とナショナリズムの本質化
  • 内向する優しさと他者の消去 
  • 震災後への接続――本質に暴力を潜ませて

第三章 歌を求める民衆/再発見される「この道」 震災後の地方新民謡運動と植

民地帝国の心象地理

第一節 新民謡という民衆運動の始まり

  • 歌を求める民衆の運動へ 
  • 労働歌としての始動――繰糸の歌
  • 地方民謡の萌芽――須坂小唄

第二節 震災後の地方民謡の広がりと町の自治

  • 旅に出る詩人たち 
  • 歌うラジオと青年運動 
  • 歌を求める民衆――信濃を例に 
  • 地方の変化/町のデモクラシー
  • 「地方」のマッピング 
  • 自発的な統合という逆説

第三節 植民地帝国の課題としての他者

  • 課題としての他者/植民地、人種、性 
  • 他者に顕示する旅/他者を位置づける旅

第四節「この道」で確認されたこと

  • 他者と出会う道 
  • 再発見される「この道」
  • 帝国の「この道」の神話的地理

第四章 国民歌謡と植民地帝国の心情動員 翼賛する詩歌/自縛される心情

第一節 地方民謡から国民歌謡へ

  • 戦時を迎える東京音頭の熱狂 
  • 地方新民謡運動の継続として 
  • 「大東京」に参与する民衆 
  • 二つの落差 
  • 流行歌から国民歌謡へ

第二節 震災後の町内会自治と国民歌謡のシステム

  • 震災後の町内会自治と歌への要求 
  • 自由の動員──校歌・社歌の使命 
  • 国民歌謡のシステムと歌の機能マップ

第三節 旗を振る民衆の国家総動員体制

  • マスメディアとメディア・イベント 
  • 旗を振る民衆の心情動員
  • 防空防災の総力戦体制 
  • 隣組からのファシズム

第四節 植民地帝国の翼賛詩歌と心情動員 

  • 詩歌曲の総力戦 
  • 生活者の心情自縛
  • 主婦の役割 
  • 神話と地理への渇望の果て

終章 継続する体制翼賛の心情

  • 歌って忘れる 
  • 戦後への詩歌翼賛 
  • 戦後に何が変わったのか
  • 継続する民衆の植民地主義

註参考文献
関連年表
あとがき


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