1990年4月、樹海社から刊行された谷川昇(1935~)の第2詩集。装画は杉山恵一。著者は浜松市生まれ、刊行時の職業は高校教師、住所は静岡市新川。
二十代で書くことをやめてしまった詩を四十代半ば過ぎて再び書きはじめたのはカミングズに出会ったことによる。元気づいた私は第一詩集『楽しい話』を、続いて『カミングズ詩集』を出版した。藤富保男氏に励ましの手紙をいただいたのは何よりも嬉しいことであった。以来、詩誌「鹿」にカミングズ論の訳と自作の詩を発表してきた。この詩集に収めた十九篇はいずれも「鹿」に発表した作品に推敲を加えたものである。こうやってまとめて読んでみると、自分の精神の働きが平凡であることにあらためておどろくが、私にとって詩を書くという行為は、言ってみれば、精神の柔軟体操のようなものであって、両足が地面にべったりついているのも致し方ないことであった。数年来、私は藤富保男氏の「詩は私にとって淋しさをかくす法螺か冗談でなければならない」を詩作信条にしてきたが、思わず真顔になってしまっている作品もある。ともあれ、このささやかな詩集が、この地球につつましく暮している人々の手に渡って、せめてコーヒー一杯分ぐらいの楽しみを与えることができれば嬉しいことだと思っているのである。
(「あとがき」より)
目次
- 詩人はつねに文字文字して
- エッチラ王とホッチラ王妃
- ソーセージイ的
- クジラのペニス
- 痴呆的日常
- アメリカでは困った
- 夕暮のバスストップで
- 目玉焼が三つずつ
- あめつちに銭の音する夕まぐれ
- まじめに真直に
- 食卓へ
- 地球は上天気
- 懐かしのイタリヤコンマ
- 歯医者へ行く
- ローンサムカウボーイ
- 忍法なめくじり
- 愛のエチュード
- あなた……したことありますか
- そして誰もいなくなる
あとがき