1983年9月、地球社から刊行された榊弘子(1928~)の第3詩集。装幀は江田鈴子。著者は青森市生まれ、刊行時の住所は埼玉県大宮市。
第二詩集「ふりかえる」を上梓してから十年余り過ぎた。その間、槌の音で沸き立つ大宮のまちを中心に、稲荷山古墳、万葉防人歌碑のある行田のさきたまの地、箕田源氏ゆかりの鴻巣など、埼玉の歴史と伝説のありかに、弱々しい私のカンテラを向けてみた。
埼玉に住む地味ながら滋味を湛えた人々とも、多少のかかわりを持った。
「蓮の女」の江田鈴子さんには装幀を煩わした。
「藍の男」の菅原匠さんは、藍の染と織のルーツを辿った方。現在、大島と大宮を往復しながら独自の作品を生み出しておられる。
登山家の加藤保男さんとは、一九六九年、JECC登山隊(加藤滝男隊長)が、世界で初めてアイガー北壁直登を果たした時以来、お近づきになった。三度目のヒマラヤで遭難したと、信じたくない。終りの詩「長駆虚空を行く」の表題と、その詩の一部に、加藤保男著「雪煙をめざして」(中央公論社)の文中の一部を引用させて頂いた。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰわたしの修羅
- 鷺
- 螢
- 水甕の女
- 黒い馬
- 花
- 雲
- 雪童子
- わたしの修羅
Ⅱ武蔵野の日かげ
Ⅲ憑かれた人
- 蓮
- 蓮の女
- 藍の男
- さくらどき
- 挽歌