1970年、思潮社より発行された高良留美子の第三詩集。装幀はVOUの清原悦志。
この本は「生徒と鳥」「場所」につづく私の三番目の詩集である。この詩集に収めた作品を、私は一九六三年からの六年間に書き、今度本にするにあたってそれぞれの作品に最終的に手を入れた。この六年間、私は詩作と生活の両面で意識的に新しい領域に踏み込み、当然見舞われる詩作主体の危機のなかで、必要な方法を探求しながらこれらの作品を書いた。これらが自然主義的な、いわゆる〈私詩〉にならないという保証は、私がこの時期につくってきた生活が、たんに生きのびるためのものではなく、私の求めていた未来への企てに支えられた、そのためのものでもあるということのうちにしかなかったのだが、これらの作品を書きながら、私は長いあいだ自分に抜き難かった、女としての生活への悪意を止揚しなければならないこと、現在はほとんど悪質な惰性の手にからめとられてしまっている生活の地平に現実を、言いかえれば未来を見出さなければならないことを感じていた。
(「あとがき」より)
目次
- 白木蓮
- 彼女
- 見えない地面の上で
- 地球の夜
- 海鳴り
- 木
- この一匹の犬と人間たちの一かたまりは
- ニュータウン
- 夏の地獄
- 友だち
- 幼年期
- 帰ってきた人
- 山鳩
- 通夜
- 雪
- 地平
- 淡雪
- 挙式
- 居間
- 焼跡
- 県立女学校
- 集団疎開
- 公園で
- 青物市場
- 遊園地へ行く道
- 投票所まで
書評