1995年12月、レアリテの会から刊行された梶原礼之(1939~)の第4詩集。レアリテ叢書35。著者は朝鮮興南生まれ、刊行時の住所は新潟市。
第四詩集になる。作品の創作期間は'75年から'90年にかけて、わたしの36歳から50歳までである。今までの詩集のなかでは、もっとも長きにわたって書きつがれてきた。しかもわたしにとっては精神的、肉体的にもっとも苦渋の多い年月であった。わたし自身がまとめた作品を眺めてみて、その大きな変化に驚かされているのである。前三作詩集は詩の方法、詩の思想というものをかなり意識して書かれたものであるが、この詩集はわたしが今いかに生きることに精一杯であったか、あるいはそう生きたかという面の方が強く出ている。わたしがそれまでの知識も体験も、すべてを捨てて裸になって書いたという感じにである。
詩とは一体何か。かつてわたしは自らの詩作にあたって、自らの詩の方法というものを展開したことがある。それは想像力と批評力の結合した詩ということで、わたし自身の詩作の経過のなかで、詩の展望としての方法論を述べ、また実作も試みた。これらの作品は、今までにわたしが出版した三詩集に結実しているし、もう少し具体的にいえば、第三詩集の作品『桃太郎現代詩考』と『内面航海』は、まさにこれにあたる。
しかしこの第四詩集は、前述したようにかなり違う。詩に<創る詩>と<生きる詩>というものがあれば、この詩集はまさに<生きる詩>に属する。もちろん詩の作品が、このように便宜的に二つに分けられるはずもない。他のいろいろな側面もあるし、両方が含まれた詩もある。ただわたしが思うのは、第三詩集以前が<創る詩>を前面に出していたのに、第四詩集は<生きる詩>の部分が前面に出ているということだ。むろん創る部分が後退した思いはあるが、生きる部分が深化したという思いもある。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 血酒
- 影ふたつ
- 沈黙
- 川
- 筏
- 葦の行先
- 未来
- 波にさらわれて
- 憂愁
- 孤独
- 殺気
- 湖
- 太陽と海
- 少女
Ⅱ
- 空
- 波の粒
- 錨の日
- 赤い石
- 春
- 暗い港
- 釣り舟
- 犬吠埼
- 富士山
Ⅲ
Ⅳ
- 宿命。
- 淵
- 秋の花
あとがき