1977年、サンリオから発行された吉野弘(1926~2014)と池田勝彦の詩画集。
美しい絵のある詩集、コンパクトでハンディで、若い人たちに読んでもらえそうな一冊の詩集――そういう本をつくってみたいなとかねがね思っていましたが、池田勝彦さんのすてきな絵に助けられて、そのねがいが叶えられることになりました。嬉しいことです。
私はこれまで、特に若い人のためということを念頭に置いて詩を書いたことはありません。読者はいつも自分自身でした。今でも、そうです。20歳のときは20歳の詩を書き、50歳の今は50歳の詩を書いています。もう若くはありません。しかし、私の年齢には随分、幅があって、10代半ぐらいからあとの年齢は全部、自分の年齢のような気が、いつもしているのです。(幼児の詩を読めれば幼児にもなれますから、実際は、もっと幅がありそうです。)言い換えれば、いくつになっても、青二才をひきずっているということです。
そういう人間の書いたものなんだから、若い人たちにも、きっと読んでもらえる――そう自惚れて、このような本をつくる気になったのです。一篇でも二篇でも、好きになってもらえる作品があれば望外の喜びです。(「あとがき」より)
目次
1・天の目
天の目
静
二月の小舟
氷の壁で
早春のバスの中で
譲る
素直な疑問符
2・生命は
生命は
みずすまし
風が吹くと
魚を釣りながら思ったこと
海
歩く
船は魚になりたがる
小さな出来事
田・舟・雨
3・夕焼け
夕焼け
山が
滝
熟れる一日
物理の夏
豹変
台風
秋の傷
忘れられて