1964年6月、詩誌「陽炎」発行所から刊行された蔵原伸二郎の第6詩集。
この詩集「岩魚」には私の五番目の詩集「乾いた道」以後の作品の中から約三十篇を集めた。その他二篇を既刊詩集から再録し、「崑崙」「砂漠」「山道」「貝塚」の四篇は選集や文学全集などに掲載されながら未だ自分の詩集に入れてなかったもので、ここに修正をほどこして収録することにした。
未発表の近作も五篇ほどある。
ともあれ、年を重ねるにしたがって、いよいよ詩に魅力を感じ、いよいよ詩作のむずかしさを知ってきた私である。それだけにこの詩集「岩魚」の出版は特にうれしい。
それに、もう一つ大きな悦びがある。それはこの詩集の出版が私の偶居する埼玉県飯能市在住の若い詩人たち、詩誌「陽炎」による町田多加次君、長谷部高治君、砂長稔君、新井幸一君らの純粋な好意と努力のおかげであり、またこれら若い人たちをつねにはげましてくださった飯能文化人諸兄姉の御後援によってできたものであるということ。
これらの方々に私は心から感謝し、厚くお礼を申し述べる。
表題の「岩魚」は集中の一篇の題名からとった。私はこの鮭科の淡水魚の生態と習性がとても好きである。最初、この詩集に私の詩論を入れたいと思ったが考えて止めることにした。詩人にとって詩論も大切ではあるが、詩作品そのものかすべてを決定すべきものだからである。もし私の詩論について知りたい方はどうか私の「東洋の詩魂」を読んでいただきたい。
(「後記」より)
目次
・狐
- めぎつね
- 黄昏いろのきつね
- おぎつね
- きつね
- 老いたきつね
- 野狐(やこ)
・岩魚
- 岩魚
- 鮭
- すずめ
- 落日
- 西瓜畑
- 遠い友よ
- 石の思想
・岸辺
- 岸辺
- 不在の人
- 昨日の映像
- 故郷
- 壺
- 鴉
- 暗号
・五月の雉
- 五月の雉
- やもり
- ひよどり
- 貝塚
- 山道
- 分校に行く道
- 孫娘とふたりで
- 動物園にて
・子守唄
- 風の中で歌う空っぽの子守唄
- 崑崙
- 砂漠
- 系図
- 心象風景
後記