1989年9月、書肆山田から刊行された川口晴美(1962~)の題2詩集。装幀は小宮山裕。
いつも、何だかほんの少しずつ居心地が悪い気がする。どこにいても、針ほどのずれがあって、わたしがその場所では異物なのだと感じさせられる。わたしがいることのできる場所がほしいとおもうとき、わたしは『どこにもない場所』と、ぼんやり呟いている。どこにもないから、手に入れることも行き着くこともできない。それを知りながら『どこにもない場所』と呼んでしまう。そして『どこにもない場所』を呼ぶように、わたしは詩を書いている。今のわたしが詩を書くのは、たぶんなにもない、誰もいない中空に、どこにもない庭を、部屋を、寝台をつかの間出現させるためだ。
(一九八九年夏 川口晴美)
目次
- 結晶日和
- アクリル・アワー
- SAUDI-ARABIAは遠い
- あたしの、キケンな、MEDELIN
- ALUMINUM LADY
- 夜の食事
- コールタール
- 単音時間(金属の誕生)
永久運動プログラム”YOKIKO”
- Ⅰ
- ⅡI(ヨキコの逆襲)
- 皿(エラーデータは夢見る)
- Ⅳ(二進法鬼ごっこ)
- Ⅴ(裏返しの地下鉄は睡眠不足)
番外編(魚狩り)
部屋