1991年6月、思潮社から刊行された川口晴美(1962~)の第3詩集。表紙写真は林隆喜(1946~)。
たとえば貯水場の壁に沿って歩いているとき、終点の駅で地下鉄を降りるとき、ふいに肌から剥がれて尖っていってしまいそうな感覚を、あわてて言葉にすりかえることがある。「なによりも濃い……声が」とか「寒冷な陽射しがテーブルに」とか。すると言葉は刃物みたいに、コンクリートのごつごつした壁や人混みのホームという現実の空間と時間をすうっと切り開くのだ。その裂け目からわたしは、わたしの感覚は、わたしの言葉は流れ出し、扇状に広がってゆく気がする。
奇妙なことに、そんなふうに出現したどこにもない場所へやがて訪れてきたものがあった。「わたし」ではない何かがそこに存在し得るということが少し恐くて、でもワクワクして、わたしはその名を呼んでみたくなったのだ。「わたし」でもなく「あなた」でもない、別の存在としての名を。(「あとがき」より)
目次
鳥子
- マリーゴールド・ハイウェイ
- トテモ、明るい春の部屋
- IRIS
- 無力の夏
- 水族館計画
- 稲妻を迎えに
- 残虐な菊
- 閉館時刻
- 臨海
ホタル(ミナト)
- Ⅰ
- Ⅱ
- Ⅲ
- Ⅳ
- Ⅴ
N
- 風土
- 条件法プール
- 湿度の方法論
- コンビニエンスストア・ピクニック
- シネマ・ブルー
- お昼寝の夏
- ぷらんしたい
- 狼の寝台
あとがき
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