1982年9月、書肆季節社から刊行された角田清文の第5詩集。装幀は政田岑生。
あのとき、わたしは桂川でひとりの女と情死しようとしたのだろうか。それとも、わたしは、<桂川>という名と情死しようとしたのだろうか。その境域はさだかでない。あの初冬の、晩秋といってもよいが、枯れいそぐ桂川の流域が夕もやにかすみさだかでなったように――。だが、そのいずれであったのかと二者択一をせまられるならば、わたしはためらいながらも、女と情死しようとしたのだとこたえるほかない。
詩の主題は愛と死である。
わたしも詩人のはしくれ、語そのものの材質感(マチエール)のかがやきの誘惑がなかったといえば嘘になる。この詩集の題を『<桂川>情死』とすべきだったかもしれぬ。だが、わたしはあえてパーレンの衣裳をぬぎすてて、だらしなく意味(愛と死)へ、この詩集をつなぎとめたかったのだ。あのときの、すっ裸のイエズスさまのように――。
(「あとがきにかえて」より)
目次
Ⅰ
- <1>の女
- <名>の女
- <背>の女
- <見>の女
- <如>の女
- <時>の女
- <夢>の女
- <委>の女
- <辻>の女
- <桜>の女
- <北>の女
- <虹>の女
- <宴>の女
- <耳>の女
- <女>の女
- <幻>の女
- <送>の女
- <飛>の女
- <妾>の女
- <オ>の女
- サ行の女
Ⅱ
- 萩と月
- 方寸記
- 桂川情死
- 「そして」の橋
- マリア
- E
- 小文字のb子ちゃん
- R・田中
- アルジブラ
「あとがき」にかえて