1997年10月、みもざ書房から刊行された橋本果枝(1948~)の第2詩集。刊行時の著者の住所は広島市西区。
おかげさまで、第二詩集をようやく出版できることになった。題は、初めから「聴花」にしたいと思っていた。この言葉について、私なりに一言、書いておきたい。
古くから、花についての名作は数あるが、直接に聴くことに結びついた作品を上げると、ホリ・ヒロシの人形舞「聴花」(恋人を亡くした女が、毎年桜の下に立ち、面影を追いながら正気を失っていく物語)があり、西行の歌に、「白川の春のこずゑのうぐひすは花のことばを聞く心地する」がある。
私にとって「聴花」は、花の気配を聴くことであり、自然を通して、姿を変えていくこの世の気配を聴くことである。じっと耳を澄ましていると、(禅僧から聞いた、自己を整えて、というところまではいかないが)人がこの世に在るということは何か、を見つけられるような気までしてくる。
大切な人の死に出会うたびに、この思いは深くなり、移ろう花に託して書くことで、そのことを問い直してみたかった。限りない花の世界を、どこまで尋ねていけたか大変心細い思いだが、一冊の本となった今、長年ご指導いただいた故相良平八郎先生、本作りでお世話になった河野勝重氏ほか、あの世とこの世で、私を支えてくださった方々に、心よりお礼を申し上げたい。
(「あとがきにかえて」より)
目次
- 螢
- わたし川
- 霧の海
- まわる
- 秋口を待つ
- 引越し
- 病室から
- 花火
- 落葉
- make-up
- 夕餉
- my foolish heart
- 離れてから
- 再会まで
- 約束
- 空模様
- 新芽
- 浴衣
- 散歌
- 祭のあと
- 森
- 聴花
- 砂丘
あとがきにかえて