世界が君に死を赦すから 亜久津歩詩集

f:id:bookface:20170812004358j:plain

 2008年11月、コールサック社から刊行された亜久津歩(1981~)の第1詩集。

 

目次

序詩 遺してゆく日々

第一歩 世界が君に死を赦すから

  • 世界が君に死を赦すから
  • 約束
  • 星クズが煌めいている
  • 一粒でも
  • 独り言
  • 泣く狢、雄
  • 泣く狢、雌
  • 無を内包する玉葱、一
  • 無を内包する玉葱、二
  • 無を内包する玉葱、三

第二歩 あざやかなる日々

  • ずっと
  • えられないもの
  • 瓦礫の上
  • 紅い嵐
  • 最も不確かな確か
  • 窓辺の小瓶
  • 白の頃
  • あなた
  • 届いては、ならない手紙
  • あざやかなる日々

第三歩 神の玩具

  • 今日が産まれる瞬間、東京は墓標になる――東京タワーにて
  • 神の玩具――新宿・都庁前にて
  • 二十七歳、葛藤はバターになるか
  • ホカニナニガ
  • 震度ゼロ
  • 終末論にも飽いた頃
  • 手品の妙
  • つかさどるは、掌
  • ひとつの

第四歩 群青の部屋

  • 群青の部屋
  • 任意の一夜
  • 飽和する静寂
  • ほんじつの予定
  • つりにゆく
  • たすけて、せんせい
  • 大丈夫
  • 彼は空を飛びたかった

第五歩 うつくしい、世界

  • 地下鉄の風、日常の淵
  • 無関係性についての一考
  • ある七日間、真夜中のメモ――いつか無言に辿りつくため、今はまだ書くしかない
  • うつくしい、世界
  • やわらかな未練
  • 黒犬とワルツを
  • 36度の残像
  • お昼寝讃歌
  • ハロー・ハロー

現点 このわたし。の遺書

  • だから、温度
  • これ以上に、かなしいことなど――おまえを埋めた夏
  • ただ、あなたは
  • このわたし。の遺書
  • 不純物の膣
  • ラブコール

あとがき

 

NDLで検索
Amazonで検索

スロー・ダンス 森原智子詩集

f:id:bookface:20170812002444j:plain

 1996年5月、思潮社から刊行された森原智子(1934~2003)の第6詩集。

 

あとがき

わたしの知らない読者のこころへも。
ちゃんと届けばよい、ゆっくりと仕上げたいとその二つのことを思って飛んだつもりでいる。愉しい詩、悲しい詩を書くとき、かなり内臓にバイヤスがかかって ハアハアいっていた。
しかし踏みきったのだから これでいいと思う。これでも良し。

 

目次

  • 回路
  • さかのぼる場所
  • 都市農協って
  • 余分
  • ガス栓
  • 読む
  • らんらん
  • 丸い喩
  • 夜の前に
  • 秘儀
  • ハンス・ベルメールの猫
  • 花丸
  • 東京の空
  • スロー・ダンス
  • ばいりんがる
  • 小屋
  • 雨の檻
  • 鏝あと
  • リンゴ属
  • 厨房暮色
  • 透き体
  • 縁という町
  • 地下駅のような
  • 霊力
  • 超低空から
  • 黒船

あとがき

 

NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索

宝篋と花讃 江森國友詩集

f:id:bookface:20170811235928j:plain

 1971年5月、母岩社から刊行された江森國友(1932~)の第1詩集。木版画日和崎尊夫(1941~1992)、装幀は吉岡実(1919~1990)。

 

 いま、ここに私の詩集が世に出ることになった。いろいろの経緯があったとしても、私には、これが時間的にも、また仕事の意味について考えても、ごく自然であったことを、喜んでいる。
 これらは、時代の橋梁部をなお危っかしい足どりで歩く、私のどきどきの愛着であり、私なりの”あるべき人間と、それを包むもの”への〈信〉と、末の世に記念さるべき〈讃〉を印したいと願ったものどもである。
 まとめてからあとで、「氾」の作品の多いことに気づいたが、これは必ずしも作品の価値の比重に従ったものでなく、堀川正美、山田正弘、水橋晋、三木卓ら同人の良き影響を、強く感じていることの個人的な記念としての必然と思い、そのままにした。(「あとがき」より)

 

目次

  • 声明慈音
  • (横臥した海)
  • (私からの眺めは)
  • (トラフラッパガニの)
  • (〈アッタ〉ものの空隙)
  • (《ふるえるの》)
  • (自然が想像力を妨げる?)
  • 花讃め
  • 寓話
  • 質問
  • 地上
  • ラセン状の村から
  • 一匹でなく
  • 桃李の……
  • 桃始華
  • たとえ太陽が……
  • 杭をうつ でもやさしい黄金のやなぎで……
  • 春の婚姻
  • 誘われた土地
  • 論語
  • 細胞
  • 夢のなかの娘 娘たちの夢
  • 抒情詩
  • 死人のうたった断片
  • 回って 舞って 曲って
  • 秩父古生層の旅
  • 愛の生活
  • 近頃の生活
  • 穀物
  • 夢の流れ
  • 桜の樹のした
  • 森の声
  • 愛・詩Ⅱ
  • 愛・詩Ⅳ
  • 愛・詩Ⅴ

あとがき


NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索

詩的関係についての覚え書 入沢康夫

f:id:bookface:20170811232411j:plain

 1979年12月、思潮社から刊行された入沢康夫の評論集。装画はレオナルド・ダ・ヴィンチ

 

目次

詩的関係についての覚え書 一九七七

  • 1迂路と直路と
  • 2迂路から迂路へ
  • 3騙る主体(その一)
  • 4騙る主体(その二)
  • 5騙る主体(その三)
  • 5bis化鳥の変貌
  • 6騙る主体(その四)
  • 7「作者」と「読者」
  • 8「詩人とは誰か」をめぐる断章
  • 9異化道断・言語同断

詩の在り処 一九七七

  • いいだ・もも詩集』と詩的青春
  • 散文詩は何処へ
  • 「文学研究」の「方法」
  • 六〇年代後半の詩の問題
  • あるモダニズム詩人の変貌
  • 「蛇足の面白さ」について
  • 詩歌作品の「読み解き」
  • 選詩集の愉しみ
  • 吉増剛造の詩の新展開
  • 大自然のポエジー
  • 唄と語りと
  • 一人の〈著者〉の死
  • 幻の「凍れる木(フローズン・ツリー)」
  • ブリュッセルの劇場火災

詩の発見 一九七八

  • 散文詩の種々相
  • 最新の詩集から
  • ある死にかかはる詩
  • 聞く詩・観る詩
  • 夢の記録
  • 詩の「自在さ」
  • 新しい詩人たち
  • ギリシア詞華集』の楽しさ
  • 詩の本文のことなど
  • 詩の擁護


書評等

入沢康夫「詩的関係についての覚え書」(言葉のあや織り)

NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索

別れの準備 藤本直規詩集

f:id:bookface:20170811224531j:plain

 1988年10月、花神社から刊行された藤本直規(1952~)の第3詩集。第39回H氏賞受賞。近年は認知症関係の著作が多い。「自動改札機」は黒瀬勝巳への悼詩。

 

 なんとなく楽天的に生きてきたな、という思いが今更ながらしているが、学問の蓄積ができない凡愚のこれまでのことは、重々口惜しく諦めながらの経過ではあった。楽天的だから、詩を書こうと思う人には誰彼となく会ってもきたが、生れつき頭がいい人なんだなとつくづく思ったのが二人いる。
 ひとりは、偶然近所に住むようになった水沼靖夫君だった。東レの研究室に勤めていたが、東工大の出身で、化学畑らしい緻密な頭脳の持ち主だった。研究室の仕事のように詩を書きつづけ、詩集『遠心』はH氏賞の最有力候補ともなったが、肺ガンで三年前に急逝した。
 もうひとりが、藤本直規君である。京大医学部の学生のころからの知りあいだが、医師の資格を得てから、大学院に行き、現在は、私の住む守山市の県立成人病センターの脳神経内科の医師である。あんな難関の学部をすらすらと出て、なお、詩を書いたりギターを弾いたりしていた。
 おもしろいことに水沼君も藤本君もへんな詩を書いていた。水沼君のは古風な抒情詩で、藤本君のは、いわば破片だった。主体がころころかわって欲望ばかりが妙な突起をみせていた。それでも十年前の詩集『解体へ』には、一篇だけ完璧な秩序をもった作品があった。巻頭の作品「子供たちへ」である。

  死人(しびと)が笑顔で手を振る
  僕はやさしい
  足元には十数匹の猫が喉を鳴らすし
  背中で三匹の蝙蝠(こうもり)が瞳をうるませている

  美和はやさしい 美和の前で
  僕はキャベツのように眠れるのだ
  愛情には敏感だが 少しばかり不器用なので
  僕は古典を愛しむように美和を
  学び始めている おおこんなにも
  僕たちはやさしい

  そんな僕たちが愛し合えば
  子供が生まれる 女の子が生まれる
  髪は少し長めがいい 化粧も知らずに
  彼女は 三歳で激しい恋に陥ち
  五歳で 黒人(ブラック)サムと結ばれる
  湿っぽいブルースも歌わずに二人は
  世界中の計算高い恋人たちに衝撃を与えるだろう

  子供が生まれる 男の子が生まれる
  彼は五歳で拳闘家(ボクサー)になり
  七歳で僕たちを打ち倒す
  その頃世界は飢えているから
  彼は最もハングリーな拳闘家になる

  おおそして
  やさしい僕たちのやさしい子供たちは
  鹿のような瞳に怒りをいっぱいためて
  大きな木槌で
  世界中の広場という広場に
  警鐘を響かせるだろう

 これを完璧な秩序と呼ぶには理由がある。この詩集と東川絹子さんの詩集『長針だけの時計』の出版のお祝いを、当時飲み仲間の寄りあっていたパブでひらいた。このふたつの詩集は、出版企画に渇望をもちはじめた頃の黒瀬勝巳君の制作によるものだった。彼の後の自殺のことはここでは措くとして、祝賀会の大方の称賛は、東川さんの水際だった不条理の世界の構築にむけられていた。
 その時求められて、ぼそぼそ喋ったときの雰囲気を何となくおぼえているのだが、私は
「別に東川さんの作品の好評に水をさすつもりはないが、ミショウやカフカ以来、私たちは不条理の世界に慣れきってしまっているんじゃないか。あるパターンにおいて巧緻になっていくことが、詩の技術だとしたら、詩というのは一体何だろう。
  藤本君の作品は未熟だけれども、まだいかなるパターンも彼を捉えていない。言葉が見知らぬパンチのように、ひゅっひゅっと迫るのを感じる。」

 というような喋りかたをしていた。そのとき私の隣には美貌の女性が坐っていて、マイクを支えながら、私が詩集のページをめくるのを助けてくれていた。後の藤本夫人真理子さんである。「子供たちへ」という作品の未来構想性は、彼のリビドーの発動のままに、具体的な秩序となり、二人の男の子が生まれた。今ちょうど六歳と三歳ではないかしら。年に一、二度私の家に現われて、拳闘家(ボクサー)ぶりを発揮してくれる。
 右に引いた人たち、故水沼靖夫君も東川絹子さんも、藤本夫妻も、東京の「言葉」の会のメンバーである。水沼君は、東京へ転勤させられた際に、私が推薦したが、藤本夫妻は元同人の内田恒氏の推薦による。ご病気中の澤村光博氏やシュールレアリスムの研究で第一人者の鶴岡善久氏、小柳玲子さん等、屈強の詩人でも論者でもある人たちの集りである。
 いつ頃からか、「言葉」を手にすると、指が自然に動いて小柳玲子さんの「石原吉郎論」と藤本直規君の作品を確認するようになった。藤本君の作品へのきっかけははっきりしている。「別れの準備」を読んでからだ。ファイターとしての彼のヒットは単発だったのに、これは上下左右に打ちこんでくる。やや芝居がかっているが、ヒットアンドアウエイの際の妙な艶っぽいしなもある。
 今読み直してみると、どうも作品の導入部にひかれたらしい。

  最終電車に乗って 終着駅に着く
  乗務員は帽子を小脇にかかえ
  開いている窓をおろして歩く
  吊り下げ広告はあんな風にはずすのか
  広告のない電車は
  女が去った後の四畳半一間のアパートのようだ
  毎日乗っているのに
  知らないことが多いな 世の中には
  サルトルボーボワールにだって
  それぞれ秘めた恋はあった
  と サルトルの死後ボーボワールは語った
  突然天井の灯りが消された
  疾走する車の前照燈(ヘッドライト)が車内を斜めに嘗めてゆく
  窓枠が影となって床に伸びる
  博物館の恐龍のあばら骨のように
  骨格だけは残るのだな 恐龍も電車も
  長い時を越えて
  あばら骨が抱いているのは何だろう?
  などと考えていたら
  ついに駅乗務員室の灯りも消えた
  改札口に鍵もかけられた
  駅が無人になる

 あれ、やけにうまくなったな、というのが即座な印象である。自分が下車したあと、霊的な目だけが残って、執拗な、なめるようなパンをしていく。影の動きなどもみごとだが、電車も駅もぶるっとひとふるえして、あとしいんとなっていく沈黙が、永遠からみた一瞬のように鮮かにとらえられている。
 多分、ひとが詩の作者を意識するのは、こんな機会だろう。私は早くから家族ぐるみ藤本君との知りあいだったが、こちらから積極的になったのは、あの詩以来だ。
 この詩集は「死者の部屋から帰った夜に」や「綿をつめる」という刺激的な作品からはじめられる。生者も死者も管腔だという認識には、北村太郎氏という粋な先達がいて、私なども、かなわないなという思いで、いつかそらんじてしまった詩句をひきずっている。「雨」の末尾近いその詩行、

  何によって、
  何のためにわれわれは管のごとき存在であるのか。
  橋のしたのブロンドのながれ、
  すべてはながれ、
  われわれの腸に死はながれる。

 それから藤本君の作品に目を移してみるとかって私たちに衝撃をあたえた甘美でニヒルな抒情が、極めて当然のように変質してしまっていることに気づかざるを得ない。死者の穴という穴に綿をつめるのは、医者ならではのニヒリズムであるが、医者にあるまじき、本能的で冒潰的な自分に対するシニシズムがやたら顔をだそうとする。それは生きている管腔の帯びる含羞とでもいうべきものか。
 こういう含羞のあらわしかたに一言ふれようと思ったのが、この文の目的で、あとはみな蛇足である。
 蛇足ついでに言えば、やはり含羞の男だった黒瀬勝巳君への悼詩「自動改札機」のは他にいいかえようがない。痛切だ。京都の一時期の私たち飲み仲間の無念を背負っている。
(「跋/大野新」より)

 


目次

  • 死者の部屋から帰った夜に
  • 綿をつめる
  • 夜中に爪を切る
  • 骨を噛む
  • 胡桃割り
  • 午前零時
  • 別れの準備
  • 自動改札機
  • 帰路
  • 骨が腐る
  • 夢の残骸
  • 頭突き

  • アダムの顎骨
  • 情死
  • ETよ こんにちは
  • 非行
  • 太陽が昇りきるまで
  • 夜の海にて
  • パン焼き職人
  • 自転車に対する愛
  • 自動販売

跋 大野新


NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索

厭世 鮎川信夫短篇集

f:id:bookface:20170811203924j:plain

 1973年11月、青土社から刊行された鮎川信夫(1920~1986)の短篇集。装本は井上敏男。

 

目次

  • 偶然の目
  • ぬい子伯母さんを理解すること
  • 跫音
  • 祖父のなかにあったもの
  • 幼年の観察
  • 隠れ場所
  • 白い馬

  • 厭世
  • 事実証明書
  • 佳景よ どこにいる
  • ある邂逅

  • 月下美人
  • ドライバー その憂鬱
  • ドライバー ある日の出来事
  • 会えなかった人


NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検
ヤフオクで検索

風もかなひぬ 伊藤悠子エッセイ集

f:id:bookface:20170811203026j:plain


 2016年4月、思潮社から刊行された伊藤悠子(1947~)のエッセイ集。装画は伊藤武夫、装幀は稲川方人

 

目次

  • まなざしのなかを チューザレ・パヴェーゼの故郷ランゲ
  • 私の好きな詩人 チューザレ・パヴェーゼ
  • ふたりのイズー
  • ほとりにたたずむ
  •  1
  •  2
  •  3
  •  4
  •  5
  •  6
  •  7
  • 夕べの風が
  • 「また来るから」
  • 小さな左手
  • にわか雪
  • 朗読を聴きに
  • 出船
  • 「笈摺草紙」
  • いとけなさ
  • 北への船路
  • 秋の岸
  • 風もかなひぬ


NDLで検索
Amazonで検索