植字工覚え書 太田朴翠詩集

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 1984年5月、太田朴翠詩集刊行委員会(代表・城侑)/詩人会議から刊行された太田朴翠(1935~1983)の遺稿詩集。

 

 詩集『植字工覚え書』は、昨年一月に急死した太田朴翠の最初の詩集であると同時に最後の詩集である。よくできているかどうかは、本づくりにうるさかった朴翠自身に聞いてみないとわからないが、彼の詩の愛好家や人間性にひかれている人なら、多分、よくできたとほめてくれるのではないか。
 詩集の制作には、詩人会議と彼が勤務していた光陽印刷の仲間の共同作業であたった。なかなか、うまい造り方に見えるかも知れないが、こうした分担ができるところに、まさに朴翠詩の特徴があるのではないかと思っている。彼が詩の主題として、活版印刷とはなにか、印刷労働者とはなにかと、鉛公害を一身にうけながら、現代の労働の本質を問うたことが、こうした詩集の成り立ち方と結びついていると考えるからである。
 ぼくは個人的にも、何回か詩集をださないかと朴翠にすすめたことがあったが、遂に彼は自分では手がけなかった。こうして詩集ができてみると、朴翠には、やっぱりこういうつくり方が、ふさわしかったのだと思っている。
 ところで、彼が亡くなって、ぼくははじめて知ったことだが、太田朴翠というのはペンネームで、本名は加藤愽だった。これは短歌をやっていた頃のペンネームだといわれているが、彼は詩の面でもいわゆる「戦後詩」と呼ばれた時期、つまり「詩は批評だ」という概念が、ひろく一般的に通用していた頃の、ひろい意味での現代詩の影響をうけていたことを、ぼくに話してくれたことがあった。
 この詩集には、最近のほぼ二十年間に書かれた作品が選ばれているが、彼の詩の魅力の一要素である自虐的な一面は、そうした彼の詩の出発と深いかかわりがあるのではないかと思っている。
(「まえがき/城侑」より)

 

目次

まえがき 城侑

第一部 植字工覚え書

  • 植字工覚え書
  • 神経がやられ始めました
  • 一人前の活版屋の職人になりたい
  • 暗い職場のなかで
  • 夜っぴて働いて朝を待つ
  • 活版屋の職人にだけは嫁にやりたくない
  • カッパンやのショクジコウ
  • 植字工の仕事は……
  • 十五年ちかい経験をもった植字工が退めていった
  • 始業ベルから昼休みまで
  • 誤植〈植字工覚え書〉

第二部 おれと息子とザリガニと

  • 花を植えるあなたに
  • おれと息子とザリガニと
  • なんばんこう――とうがらし――
  • 花ヘ―――娘と息子に――
  • 胃袋いっぱいに めしをくおう
  • 生きざま
  • くゎつと眼をひらいて
  • ふりむかない
  • 風――女に――

第三部 たたかうからには

  • 眼や眼のなかの眼
  • トカップ
  • きいているか
  • たたかうからには
  • 1963・7月5日夜
  • 旗をかざす人々
  • 毒はいつもかくされている
  • 一九七四年一月の朝
  • 走りいそぐ
  • 黙れ 黙れというのですか

第四部 エッセイ・童話

  • 活版屋稼業
  • 魅力ある職場をめざして
  • むかし紅花 いまサクランボ
  • 〈童話〉きのこのはなし

 

解説奥田史郎
作品目録
略年譜
あとがき


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