1991年4月、思潮社から刊行された建畠晢(1947~)の第1詩集。カバー・扉は北辻良央、装幀は大石正浩。付録栞は、入沢康夫「建畠晢氏の詩」、高橋睦郎「言葉の力」、稲川方人「差異への踏み出し」。刊行時、著者は多摩美術大学美術学部芸術学科助教授。第2回歴程新鋭賞受賞作品。
この詩集は、ほとんど発表を考えることもなく、この四、五年、気ままに続けてきた”散文の旅”をまとめたものである。注文に応じて書き、それなりに読者の目に触れてきた美術評論とは対極の孤独な作業ではあったが、散文を批評意識で支えるという意味では、私自身にとっては相補的な世界であったとも言える。
形式に対するさしたる自覚があるわけではない。ただ、それが書かれた部屋とテーブルの感触をもつ言葉、つまり卓上で折り畳まれた論理、壁際で蛇行する物語が、言葉の可能性そのものに対するウロボロス的な批評でありうればと思ってはいる。
(「あとがき」より)
目次
- 旅の遅延
- 下痢の止まらぬ女
- 草を押す人類
- ヤング・ウーマンズ・ヴォイス
- 中腰の女
- あいまいな建築
- アドレス
- 野の頁
- 赤く暗い領土
- おお牧場は緑
- 観葉植物
- 余白のランナー
- 異論
- 距離のゴジラよ
- 声と条約Ⅰ
- 声と条約Ⅱ
- 草の力と黒い服
- 悪しき習慣
- 糞の出ない若者
- 溝と文脈
- あのエンジン、このニンジン
- 走る鼻、半蔵門線は非線形
- 反注釈
- 土蔵とシャンソン
- 円窓の歴史
- 酒場の階段
- 遺伝子のズボン
- 見上げると屋上の塔に
- 午後の浄財
- 羊毛宮
- 経済的なシルエット
- あだ名はアルマジロ
- カナリア、かなりあり
あとがき