1963年10月、新光閣書店から刊行された八並誠一の第3詩集。
昭和33年に、二冊目の詩集「贋クリスマスの夜」を出したとき、詩作の先輩、森荘已池氏から「貴兄のものは一流と思うが、何せ量が少なすぎる。たったひとつの詩の句を得ればいいというような説には、賛成しがたい」と、たしなめられた。
「一流」であるかどうかは別として、この本にあつめられた作品の数は、二冊目の冊子にくらべて更に少く、一冊目の本よりも、もっともっとすくない。
「たったひとつの詩の句」が得られたかどうかはわからないが、一冊の本にして出版する気持になったのは、ながく勤めていた若杉小学校から転出することになって、多くのひとびとから寄せられた好意にむくいるのにこのこと以外に、私に思い付くことはなかったからであり、版元の新光閣書店、山北守男氏から、詩集を出すときは、いつでもどうぞと、温い言葉を貰っていたからである。
作品のうち「面影橋」と「モデル線区」の二篇は東京都教育庁、福祉課、教職員文化会から出ている季刊誌「文化」に二年ほどへだてた号に発表したものであり「東京都杉並区立若杉小学校」は「日本児童文学」8号に少年詩を――という注文をもらって書いた。
その他の作品は全部「文学草紙」に載せたものである。
「文学草紙」は昭和14年に創刊、現在8号を発行したところであるが、この雑誌は、ここ数年来、一年に一冊、年に一冊半も出たらいい方といったすこぶるおっとりした「名門」の同人雑誌で、その同人の一人である私は、その誌風になじんで、習作も年に一篇か、せいぜい一篇半ということになってしまった。
(「跋」より)
目次
朔太郎像 舟越保武作
- 列
- 島の庄石舞台
- 海底にて
- 昆虫
- 虎符
- 路地へまがれば
- 面影橋
- ゲロ伯爵伝
- モデル線区
- 東京都杉並区立若杉小学校
跋