美男 安西均詩集

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 1958年2月、昭森社から刊行された安西均(1919~1994)の第2詩集。書は篠田桃紅。

 

 これは、私の第二詩集である。
 第一詩集『花の店』(学風書院刊)に編み残した作品のなかから若干を選びさらにその後に書いた作品を加えてみた。
『花の店』のあとがきにも書いておいたことであるが、私の詩篇にはいわゆる詩学的な鍛練が不断に加えられてきたものではないから、前詩集にくらべて際立った特色を持つことなどできるはずがなかったし、まして自負するに足るかくべつの意図があるわけでもない。要するに昭森社主・森谷均氏のおすすめと、書家・篠田桃紅さんの御協力とを得なかったならば、おそらく私ひとりでは、この未熟で粗雑で寡少な詩篇をあつめて仰々しくも詩集と名づける勇気は、とうていなかったであろう。
『花の店』に題箋を賜った篠田桃紅さんには、こんどは集中に挿入する書作品の揮毫をねだったところ、さいわいに快諾していただいた。篠田桃紅さんは一昨年秋ボストン美術館における個展開催を機会に渡米したまま、いまなお多忙な滞留生活を送っておられる。詩集のためには著者の詩に因んだものを揮毫したいといってきて、まもなく流麗な書作品をニューヨークの客含から就空便で届けてくださった。
 さいごにまた弁解がましいことを附記しておとうと思う。『美男(ビナン)』という題名について嗤う友人があって、やはり私もすこしばかり照臭くなったからである。私の勝手な語感では、これは「美しい」という形容詞そのままではなく、むしろ単なる「男」という名詞に冠した接頭語的な軽い美称のつもりである。私の恣意は、あるときは古典のなかに、あるときは現代生活の一端のなかに、漠然と「男」というものの姿を探索しているのではないかと、ふと考えてみる場合があったりする。そういう男たちを、私好みの呼び方でいえば、いずれも「美男」なのである。ただそれだけのことである。
(「あとがき」より)

 

 

目次

1

  • 実朝
  • 明月記
  • 業平忌
  • 小銃記

2

  • 須臾の少女
  • 飛行感傷
  • 廃馬
  • きさらぎ
  • 平家物語
  • 古歌
  • 花の尖のように
  • 禁錮
  • 五月歌

3

  • 遠い田舎町には
  • エルパソを過ぎるときに
  • 朝、電話が鳴る
  • 罐詰みたいな醜聞
  • 日光くさいベッド

篠田桃紅 作品
「明月記」によせて(コロタイプ)
「すなのしなびね」(トッパン)『花の店』所収「童謡」より
「泉」(『花の店』所収)によせて(コロタイプ)

あとがき


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