1979年7月、詩学社から刊行された相原校三(1940~)の第1詩集。装幀は山領まり。著者は東京生まれ、刊行時の住所は埼玉県草加市。
あれののはてに行きかう鳥たちの光景は、震える思いを私のなかに呼びおこした。鳥に置き換えて人間を考えるなどということはなかった。声だけで、その鳥の名前をあてるということもいまだに習得出来ない。まごまごしているうちに、私の視界から沢山の鳥たちがいなくなってしまった。いま目撃する鳥たちは恐らく人間の滅びた後にも、力強い生活を続けるものたちではないか。
鳥のいる風景を書いてきたものとして、それはどういうことかを説明出来ないのはつらいことだ。ただ、その折々の一回性の感情を、充実感をもって掻き抱き、立ち煉んでいたのは事実である。すでに通りすぎてしまった時代の感情のコピーを、いまさら晒け出すことは、生き方として正しくないのではないか、という恐れと、さびしさが走り続ける。けれど、こういう形で踏切を渡りたいという願いも、また大きいのである。
嘗て、日夏菫路という名前で投稿していた頃から現在までの十年近い時間のなかの、初期の物象詩篇に包括出来る作品だけを撰び出してこの一巻を構成したが、青春の傷あとを見るばつの悪さは押さえられたない。
(「あとがき」より)
目次
- 沼
- 樹
- 渇き
- 鳥への方法
- 猿
- 夢から醒めて
- 階段
- 花蜘妹
- 猿まわし
- 秋の林で
- 植物
- 花
- 泥流の秋
- 月蝕の夜
- 残酷なイメージ-
- 鳥
- 冬の印象
- にわとり
- 鉄
- 冬の終りのうた*
- 冬の終りのうた**
- 森林から
- 秋
- 冬紀行
- 鮒
- 海の時間
- 六月の門
- 寂しい夏
- ある領城
- 魚の気持
- 秋ヘ
- 雪の海
- 街角
- 雲り日の径で
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