1982年9月、同時代社から刊行された柳原良平(1931~2015)の画文集。
同時代社の藤井宏志サンは私がいた兵庫県立尼崎高等学校の後輩である。その藤井サンにウチからなにか本を出してみませんかと声をかけられた。私もこういうきっかけで仕事をするのが好きなのでその気になった。今まで船や港をテーマにした本をすでに十数冊出している私だが、今度は船や港でない本にしてみたいという藤井サンのアイデアにいっそう食指が動いてたのしくなった。今までやっていないことを試みるというのは物を創る人間には大へん心が踊る。そこで、私は花の絵などのある画文集にしてみようと思った。実は花の絵を描くのが好きなのである。日頃、仕事で描く注文の絵はどうしても船や港が多い私だが、そういう絵を描くことだけに追われないために、花屋で適当な花を買ってきて花瓶に差して写生をする。昔、美術学校で教えられた頃を思い出すトレーニングのようなものかもしれない。美術学校ではススキを百本描けとか、松カサを百コ写生しろと教えられた。花の写生は私にとってデッサンであり軌道修正である。その時間が持てることが嬉しくて、花の絵は好きなのだ。
花や木、動物や虫、そしてサカナ、動植物図鑑のようだが、その中から今までの私の生活にエピソードを残したものを選びして書いてみた。花とサカナが多かったので"花と魚と"になった。
一九八二年七月
(「あとがき」より)
目次
- コスモス
- マーガレット
- ポピー
- 木槿の花
- 金木犀
- いちょう
- 花札
- サクラ
- 梅
- 海水魚
- フッコ
- フグ
- おろす
- 煮干し
- 蛸
- アカエイ
- うなぎ
- 犬
- 馬
- 干支
- ニワトリ
- ネズミ
- 煮〆め
- 百合根
- サラダ
- 野菜あれこれ
- ブロッコリー
- 昆虫採集
- カナブン
- かぶと虫