1981年5月、三多摩いしずえ会から原菊枝(1905~1946)の獄中体験記。底本は、1930年12月、春陽堂が刊行。
解放運動犠牲者遺族会「三多摩いしずえ会」の第十回総会記念事業の一つとして懸案の「女子党員獄中記」を復刻発行することになった。同書は著者の三・一五事件の弾圧による二年余の獄中闘争の体験を、出獄の直後にモップルの難波英夫氏のすすめで執筆出版されたもので、出版と同時に「御大典呪咀其ノ他」を理由に発買禁止(安寧禁止)の弾圧を受け以来五十年陽の目を見ることなく今日まで葬られていた。
国会での春日違憲質問以来、日本の暗い谷間の時代への関心がたかまり、同時に「治安維持法国家賠償要求同盟」などの活動の中で、多くの人びとによって当時の弾圧の体験が語られ、思い出が出版されて有事立法はじめ多くの反動立法によって、治安維持法時代の再現が危具される情勢の中で大きな警鐘となっているとき、本書の復刻版発行の意義は大きく、出版に当って、同書のご感想をお寄せ戴いた沢地久枝、著者の略歴をお書き戴いた遺児矢作直子両氏をはじめ、御多忙のなか御協力下さった方がたに感謝申し上げます。(「あとがき」より)
目次
序
・三月十五日
- 留置場
- 入所
- 監房
- 普通の犯罪者
- 病氣
・同志
- 十月の×××
- 渡政の殺された記事その他
- 夏から秋
- 冬
- お正月
- 三・一五の記念日
- ロシア××記念日
- 懲罰の間
- 靑桐
- 猫の戀
- 天麩羅
- 副食物
- うどん
・××××さんの室
- ケチナ婆さん
・魔法使ひの婆さん
- 男見るのは眼の毒だ
- 裁判所行き
- 南京蟲
・鹽でもむ
- 絕食
- 人殺しした人達
- 犯罪を作る人は誰か?
- 繪猫姉さん
- 榮養不良
- 通信
- 保釋
- 差入の本
- 共犯者からの手紙
- 英雄閑日月有
- 組織をもたなければ駄目だ
- 千代子さん
岩田菊枝略歴
あとがき