1976年6月、青土社から刊行された川田絢音(1940~)の第2詩集。栞解説は飯島耕一(1930~2013)。
『ピサ通り』は小さな詩集だが、考えぬいて書かれてあるので、何度読んでも倦きることがない。その一篇一篇に、小さな、しかし真剣な謎がかくされてあるので倦きないのであろう。この詩人の一所懸命な、息のつめ方に、ぼくたちはひきつけられる。
『ビサ通り』の詩は、一篇一篇が短篇小説のようでもある。これらの大部分がイタリアの町でのことなので、ちょっとモラヴィアの短篇小説を連想する。人々が生きている。体温が感じられる。何かが起りそうだ。しかし最終行のその先は、読者自身が空想するしかない。
川田絢音さんはかつてはもっと抽象的な、純白な感じの詩を書いていた。それは純粋なものだったが。もう行くところまで行っていると思われた。
彼女は大へんな努力をして長い時間を注ぎこんでようやく『ピサ通り』の十六篇を書いた、たった十六篇の掌にのるほどの詩。しかしそのどれもが軽やかに重く、彼女とぼくたちの生の現実を要約している、
(「『ピサ通り』について/飯島耕一」より)
目次
- 街
- ガラス・ケースの空
- 彼女
- 映画
- 桜
- じゃあ また
- ピサ通り
- 村
- マダム・シルドウルニット
- グェル公園
- 屋根裏部屋
- 鍵
- 日光浴
- ガイドになれない
- ホテル
- ひばり