1958年11月、私家版として刊行された藤森秀夫(1894~1962)の詩集。著者自装。
処女詩集「こけもも」が本郷四丁目文武堂から出たのが大正八年十月十五日であった。次の「若き日の影」は神田交蘭社から、それとほぼ同時に「フリヂヤ」と云う小曲集が神田金星堂から出た。次に同社から「紫水晶」が上木となったのは昭和二年十二月二十日であった。次の詩謡集「稲」は昭和四年十二月一日、淀橋角筈光奎社版で出た。私の詩集で公となったものはこれ位であった。其のほか「玩具の日本橋」と云う童謡集は出版者が破産して、其処へ行ってた原稿が紛失したので公表に到らなかった。その後新聞や雑誌に載ったり、或はコロンビヤやビクター等にレコード化されたものがあって、詩集に収録する心算で溜めて置いたが、戦災で焼けてしまった。約一冊分はあろう。次の詩篇などもその一つだが、幸今も覚えているので誌す。
雪の立山 毎日吹雪
鳥も歌も みな降りた
峯にとまるは 閑古鳥ばかり
今日は白無垢 身につけて
窓で見る山 見なれた山に
雪崩で埋れた 霊もある。
立山閑古鳥 何見て啼くか
拾いわすれた スキー靴此の歌は窪田某と云うリーダーに引卒された、東大生を混えた五人の東京学生が立山で遭難したのを嘆いて唄った歌だ。其の他、様々な歌があり、一部は作曲もされ、振りつけもされ、歌われもしたが、原稿を一切灰燼に帰した現在、うろ覚えだけで誠に覚束ない。其の他私の文芸上の創作に-は昭和七年三月一日発刊の「三つの鍵」があって、短篇を集めて収録してある。以後卅年今私の新詩集が出る事となった。題して「風と鳥」と云う。
(「序」より)
目次
・国立詩集
- 武蔵野時雨
- 昔の夢
- 早越
- 中央線
- 役場
- 外人自動車
- ダーリヤ
- 蜩
- 紅梅
- まりも
- 江戸川
- 思出と現実
- 馴染鳥
- 直営
- 土用鰻
- 田園都市
- 瘋狂院
- 靈柩車
- 大和相場
- リットル ロック
- 井の頭公園
- 農夫
- ゴジラの像
- 仙台荒浜にて
思い出の東京
- ハイティン
- 一高時代
- 白川大将の家
- 近衛直麿
- 渋谷にいた頃
- 富ヶ谷
- 雑司ヶ谷
- 野口雨情
- 伊藤忠とローマ字
- 物足りなさ
- 本居長世
- 大阪
- 不忍の池
- 深山ふじ子
- 与謝野晶子
- シーリーさん
- 赤ちゃん
- 長いつきあい
- 夢のアメリカ
北陸詩抄
- 新湊海岸にて
- 呉羽トンネル
- 万年草
- 長脇差
- 交代休
- 中井桜洲
- 徳永柳洲
- 美華絵良
- 十字爆撃
- 焼土
- 岩瀬
- 前校医の家
- 富山の詩人たち
- 相川俊孝
- 金沢
故郷の唄
- きんぽうげ
- 猟師
- 除沢ぶち
- お国訛り
- さわやぎさん
- 光の天狗
- 飯沼飛行士
- 覚えておおき
- 葛温泉
- 蕎麦
- 桜
- 甥の洋行
- 二人の従妹
- 紫露草 廻転軸
- 碌山館
- 金城
- 上高地
- コンマラハジキ
- いたち
- 桑もぎ
- きのこ雲
- 松本の盆
- 小倉
- アウト・ダ・フェ
- 赤ざ
- 捨てよう
- 丁字風呂
- 桂谷山人
- 屠殺場
- 朝鮮ダリヤ
- 義民嘉助
- 池田町
- 茄子の枯木
- 栗生の満願寺
- 辻新次
- 島木赤彦
- 豊科
- 信濃不二
- 善さ
- 正一位稻荷大明神
- 校歌と土産神
- 翡翠
- 伝書鳩
- まほろば
- よく慾な
- 町会
- 大王松
- 子規
- 旱魃
- ○○と云う男
- アロハ時代
- 石膏像
- バザーロフとチン
- 農休
関連リンク
藤森秀夫(Wikipedia)