2009年10月、私家版として刊行された野村尚志の詩集。
この詩集に収めた詩は2004年春から2009年夏にかけて書かれた。思い返してみると、私は日常の事物や人を描きながら、無を目指して詩に向かい合っていたと言えるだろう。無こそが、すべてのものを平等にするという考えが私にはあった。しかしそれでは現実的に何も変わらないばかりか、私にさえ何の変化ももたらさない。これは私を強い無力感におとしいれるのだった。
私は詩を書く意味がつかめなくなり、混乱し模索を始めた。それが次に発行する詩集「私の在り処」だ。あわせて読んでいただけたらと思う。表紙の写真は私が撮影したもの。タイトルは「打ち捨てられた雨傘」。
(「あとがき」より)
目次
- 紅梅の鳥
- わきみず
- 雨水を溜めた雨傘
- 三月
- 井戸
- 十五、六年,
- 雨滴
- 雷鳴
- 引越し
- 海まで
- 湾
- 貝
- 波
- 十二月
- 隙間
- ぶちの猫
- 落ちない実
- 内側と外側
- 店と客との関係
- 打ち捨てられた雨傘
- 緑
- 寒暖
- 釘
- 冬の樹
- 鋏
- 三角
- 表情
- 傘を窄めた
- 段差
- 判子
- 川原
- 丸
- 門
- 切株
- 落ちた物
- 水仙
- 残った水
- 光の筋
- 駐車場の広がり
- 笑う顔
- 音無し
- まだ開かれていない雨傘
あとがき