2016年9月、思潮社から刊行された浜江順子の第7詩集。カバー作品は建畠覚造。撮影は山本糾。第35回現代詩人賞候補作品。
『密室の惑星へ』には、閉じた心、あるいはあらゆる閉ざされた密室において一人ひとりが悩み、蟲きながらも持ちつづける、不思議な自由浮遊惑星のようなものへの願望が大きく小さくゆれている。そこには、「秘すれば花」のような内なる内部へのときめきとゆらめきもあやうく秘めているといっていいだろう。
地球という観点でいうなら、地球は水をたたえた美しき惑星であり、現在では水が存在しうる地球型惑星は銀河系に一○○億個存在するともいわれているが、まだまだ地球は水の惑星としては孤独な密室にあるといっていい。そこでは、悲しいかないまも絶えず戦いが繰り返されている。ミシェル・フーコーの『監獄の誕生』(田村破訳、新潮社刊)を「いま」という時代に照らしあわせるならば、現代の地球という閉塞した密室においても、まだ絶えず何者かによって監視されている空間であるという側面も持つといえるだろう。だからこそ、密室のなかの惑星はゆらめく放物線を放ちながら、彷徨い、戸惑い、自由を求めて果てしない飛行を今日も繰り返す。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- ふたつの顔
- 表出
- 密室の惑星へ
- 発芽しない
Ⅱ
- 黒い波
- 不信の森
- 這う殺意
- 無関係の谷間
- 畜生道霞
- 丘と兵
Ⅲ
Ⅳ
- 電話
- 三歩
Ⅴ
- 閾
- 鼻をつぶされた男
- 異物のつぶて
- 田圃の真ん中の墓場から
Ⅵ
- 制御不能の、
- 玉突きの芽
- なにかいる
- 突起
- 底の川
あとがき