1996年3月、書肆みずきから刊行された原田勇男(1937~)の第6詩集。装幀は上野憲男。著者は東京生れ、刊行時の住所は仙台市青葉区。
この詩集に収めた作品は、一九八九年から一九九五年までの間に書いた詩の中から選んだものである。この間、木や水とのきわめて素朴な交感が私のひび割れた生を潤してくれたのだと思う。この美しく壊れやすい地球上で、世界を構成する最もプリミティブな存在に向き合うこと。それがここ数年来の主題だったのかも知れない。
また年老いた父に何も報いることなく死に別れた負い目があり、そんな思いが父への二編のレクイエムと、少年時に題材を取った作品を書かせたのだろう。この水惑星の北半球のまちで、ささやかな魂のメッセージを紡いできたが、これらの詩篇を通してこの星で共生する人びとの胸に、何か伝わるものがあれば幸いである。
(「あとがき」より)
目次
- キャッチボール
- 生の無垢な輝き
- 夢のフォルム
- 今いちばん望ましいのは
- 緑光樹の季節に
- アスペンの樹
- 魂の樹
- 夢のかなう場所
- 鳥の領分
- 雪の日にヒバの香りが
- 時の踊り場で
- 五、四○○秒の音楽
- 夏・童画の時間
- おまじない
- 螢の木
- とおいすてーしょん
- 黒いひまわり
- 羽化の時間
- 水の儀式
- おが屑だらけのフィールドで
- 樹木の船
- 小さな疑問
- 予感
- 水惑星の北半球のまちで
- 鳥の魂と
- アロイス・カリジェの絵本にも
- 生命の水
- 広瀬川を下って
- オレンジ色した海の木
- 舷窓から
- 薄いフィルムの内側で
- 夏の葉を繁らせるハルニレの木に
- チェロを弾く風のナウシカ
- 宇宙の巨きな流れに
あとがき