小島信一詩集

 1976年10月、私家版として刊行された小島信一(1924~)の詩集。著者は市ヶ谷砂土原町生まれ。

 

 私の家は、維新で没落、一家離散した旗本の娘という人によって再興されたらしいが、二代目にあたる父母がともに早世したので、重荷が三代目の肩にのしかかってくるような想いである。
 『売家と唐様で書く三代目という川柳を知ってるかい』と、父は晩酌のたびに息子にダメを押したものだ。十五年前に出した処女詩集の後記に、友情というものすら信じられなかった暗い青春について語ったが、今おもうと、引っこみ思案の自分に詩を書かせたのはひとえに旧友たちのシッタゲキレイだった。いま私はかれらに感謝しなければならない。
 市ヶ谷の生地は空襲で焼かれ、その跡地にはいま偕成社という絵本屋さんが子供の夢をあきなっている。いまはない故郷のかわりに、私はいづれ那智の海の沖あいにでも骨を沈めてもらいたいと夢みている。
(「後記」より)

 

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後記


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