1982年4月、創樹社から刊行された野田真吉(1916~1993)の第2詩集。装幀は山下菊二。刊行時の著者の住所は杉並区成田西。
本詩集は私の第一詩集『奈落転々』(七八年創樹社刊)につぐ第二詩集です。作詩年度は七八年から八〇年ごろのものです。私の愚思愚行、蒙昧不遜の所業の名残りです。その意味で、詩集の題名を『暗愚唱歌』としました。「石の歌」を『公園』第六号(七九年)に、「鳥の反抒情と抒情の構造」を『点』創刊号(八一年)に、「巻貝の歌」を『点』第二号(八二年)にのせた以外はすべて未発表の作品です。本集をだすまで、畏友佐々木基一、長谷川龍生、真鍋呉夫、また装幀の山下菊二のみなさん方にいろいろとお世話になりつづけてきました。出版にあたっては『奈落転々』と同じく創樹社の玉井五一さんはじめ同社の方々のお力ぞえにあずかりました。ここに改めて、みなみなさまに心から感謝いたします。
さて、この数年間、時々の思いにまかせ、自由気ままにつくっていた詩篇のなかから二十篇をえらんで本集を編んでみました。格別、こと新しく、いいたてることとてありませんが、一言いいそえれば私は自分の詩が新旧いずれの風姿、流派にかかわっているかなど思いわずらったことがありません。私の詩は私の詩以外の何ものでもないと思っています。いまの世に生きている一人の人間の心のひだの律動、あるいはうごめきを私の詩に表現しようと念じているにすぎません。そのような所産ですから、もし本詩集を手にされた方の誦吟の種ともなれば幸いに存じる次第です。
(「後記」より)
目次
第一部 暗愚唱歌
- 鳥の反抒情と抒情の構造
- 夢のなかの夢、夢のなかの私
- 標本箱
- 水虫
- ピクニック
- 飛んできた絵凧
- 私のすきな散歩横丁――匂える横丁
- 風の戯れ
- 石の歌
- 巻貝の歌――わが愚思 愚行の歌
第二部 黙々喋々
- 私は首つりの森をみた
- 環のなかの手紙
- 宇宙人の歌
- 暑中御見舞
- また、夕暮がめぐってくる
- 二重写しになった映像
- 眼
- 悲歌(えれじー)
- 烏よ
- 真夜中の自問自答の歌
後記