1948年12月、千代田出版社から刊行された能登秀夫(1907~)の第3詩集。表紙は十河巌、装画は乾宏、編集は森岡秀郎。
昭和八年の夏、第二詩集「都會の眼」を刊して、とたんに發禁處分を受けた、內容が赤いから、思想が惡るいからとて、いまから十五年前、私の二十七歲の頃。
それから私は詩を書かなくなくなつた。いや書けなくなつたといふ方が適わしいかも知れない、為政者に迎合し時局に便乗するといふような、きような藝當は私には出來なかったのである。
昭和二十年八月十五日、敗戰を機會に新しい日本を迎え、十二年振りに再び詩筆を握るようになり、そして三年、漸く二〇篇餘の作品を發表はしたものゝ、いかんながら永い休息は私自身を滿足さするのを生み得なかった。
齢、いたずらに加はるばかりで、このまゝ凡々と老ひ果つるものかと案じられてもきた。
これら悲しむべき私の現實に、一道の光をあたへてくれたのは、國鐵に職を奉づる若い詩人達の勤勞詩運動であり、日本民主化の先頭に立てる労働組合の動きである。
嘗て私の提唱しつゞけてきた自由と正義が、いまや白日の下に根強き反動勢力と血みどろになつに斗っている世の姿である。
私は敗戦後の二ヶ年餘、労働組合執行部の一員として、労働文化運動の第一線に立ち、世の裏表をつぶさに見せつけられた。
働く人達の喜び、悲しみ、あこがれは同時に私の喜び、悲しみ、あこがれであり、私の詩の對照もそれら働く人達である。
本詩集中、第一部、第二部は戰後の作品であり、その殆んどが私の關係する労働組合の機關紙に發表されたもの、第三部は發禁詩集「都會の眼」より、その當時不穩當なるのとして公にせられなかったものなど十一篇を收錄した。
(「後記」より)
目次
・第一部
・第二部
- 犬と子供
- 秋風景
- 働く君達
- 故郷
- けむり
- 機關車日記
- ある話
- 蒼い蚊帳
- 芋
- 墓参
- 貧乏時代
- おやぢさん
- 冬
・第三部
- 檻の中の犬
- 高知の思ひ出
- 村道
- 追伸
- 雪
- 道
- 山への幻想
- 空
- 空を衝つ心
- 母校
- 向ひ合つた鮮人
後記
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