第一日の孤独 塔和子詩集

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 1976年3月、蝸牛社から刊行された塔和子(1929~2013の第4詩集。題字は大岡信、装幀は渡辺隆。

 

 私にとってこのかけがえのない一回きりの生は、遠い始祖からの血の流れの中で、生まれ死に生まれ死に、際限もなく受けつがれて来た、ひとつぶの層によって在らしめられ、また歴史の中へ流れ去って行く生存への時間の中の、一小単位の時間帯の中にあるにしかすぎません。
 そして私にとってこの貴重な生は、その生を得た瞬間からすでに死が約束されていて、死までの距離をこのばくとしたものながら向こうに見える死の不安「産褥で交された生と死の調印が鮮やかに占める領土は私」と「領土」という詩の中で記しましたように、産れたと同時に、このぬきさしならない運命を自分の中にもって、ひとり歩んでゆかなければならない生の孤独を背負わされたものとして、その生誕の第一日から人が背負って生きている現実を見つめることによって、日々の生活の中から産まれ出た作品です。
 この詩集に収めました作品は、一九七三年に発行になりました。前著「エバの裔」以後のもので、詩誌「黄薔薇」及び三木昇氏発行の「樫」麻生知子氏発行の「白翔」に発表いたしました作品に未発表作品を加えました五十五編で私の第四詩集です。
(「後記」より) 

 


目次

  • 領土
  • 切花
  • 一本の骨
  • カーテン
  • 薔薇
  • うす青く
  • ひとつの世界
  • 悲哀
  • 気泡
  • 春の日に
  • 花瓶
  • 深夜
  • 表情
  • いまは蛹の
  • 立っている悲哀
  • 生鮮食料品
  • 秋の鳥
  • そいつ
  • かつて夏の日
  • マネキン
  • 決済
  • 来たもの
  • ふいに
  • 蜃気楼
  • 気付く
  • 混沌の不安
  • 目差し
  • 草野
  • かまれる
  • 居る
  • いつも外側
  • 吹雪
  • 冬の木
  • たばね
  • 春の所在
  • 美容院
  • やすらぎ
  • 悪感
  • 偉容
  • 秘めやかに美しい
  • かずならぬ日に
  • 優雅に
  • たね

跋 永瀬清子
後記


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