新版 びろう葉帽子の下で 山尾三省詩集

 2020年2月、野草社から刊行された山尾三省の詩集。装画イラストはnakaban、デザインは三木俊一。旧版は1987年12月に、新装版は1993年7月に刊行。付録栞は手塚賢至「『びろう葉帽子の下で』に寄せて」、nakaban「鋏を手に、詩人を想った日」。

 

 この詩集の初版が出たのは一九八七年の十二月であったから、それからもう五年半の月日が過ぎたことになる。この間私は再婚し、新しく二人の子供にも恵まれて、二度目の人生を生きている。
 この五年半の間、私としては日本の各地でに五、六回の割合でこの詩集の朗読をしてき、それなりの反響をいただいてきた。朗読に際しては、あらかじめこれこれの詩を読もうという予定は立てず、直前になって任意のページを開き、そこから読み始めるという方法を主としてとってきた。その場その時の、偶然の鉄則による出会いを楽しむためであった。
 偶然の鉄則によってページをめくるのであるが、ごの詩が本の中のどの辺りにあるかということは当然分かっているので、おおよその見当はある。今回は、章でいえば後半の「縄文の火」から読もうと見当をつけてページを割るが、指先がひっかかって、一章の「歌のまこと」が開けてしまったりすることもある。そういう時には、素直に指先に従って「歌のまこと」の章を読むことを楽しむ。
 古い読者、そして新しい読者にお願いしたいのだが、こんな部厚い詩集は、最初から順を追って読み通すのでは疲れてしまう。任意に偶然の鉄則に従ってごこかを開き、そこから少なくとも十篇くらいの詩を読んでみていただきたい。三、四篇の少々長い時を除いてはごれも短い詩だから、十篇読むのに大した時間は必要でない。そうしていただければ、多分きっとあなたと私の共通の時間がそこに創り出され、それは太古以来人が、「歌」と呼び「詩」と呼び続けてきた、日常性でありながら非日常の特異な時間であり、場でもあることが気づかれるだろう。
 詩、あるいは歌は、絶望に耐え得る希望、あるいは祈りとして、太古以来歌われ、形づくられ続けてきたものである。私の詩がこの世紀末の絶望に耐え得るものかどうかは読者にゆだねねばならないが、私の希望と祈りはこの十年、この二十年変わらずに大地そのものにあり、大地と共に生きる人達と共にある。この大地(地球)が大宇宙の子供であるという物理的精神的な感性は当然あるけれども、そうであればあるほどこの大地こそは希望である。
大地、地域、風土、地球、この四つの言葉が相互に示し合い、鳴らし合う響きと風景の中に、私の希望は今もある。
 新装版に当たっては、二ヶ所あった誤植を直し、一ヶ所の事実誤記を訂正し、一ヶ所のやむを得ぬ語句変更をしたのを除いては、初版に手を入れることはひかえた。
 装幀については、発行者の石垣さんの希望にそって新しくし、中山銀士さんにお願いすることになった。中味は変わらないが、私自身が月々年々にそうであるように、読む人によって内容は変わる。新しい版が、古い読者また新しい読者によって、希望と祈りを紡ぐ素材の糸になり得れば幸いである。
(「新装版あとがき(一九九三年四月一九日)」より)

 

 


目次

序 今福龍太
・歌のまこと
川辺の夜の歌
土と詩
すみれほどな小さき人に
歌のまこと
この道――太郎に
月夜
聖老人
火を焚きなさい
淋しさ
海へ行った
家族
夕日
大工
夢起こし――地域社会原論
かぼちゃ
カワバタさん
シジフォス
台風が過ぎて

山茶花
夕食のあと

冬の島


子供たちへ
さるのこしかけ
三月一日
げんげ 九句
青い山なみ 三句
ほうせん花と縄文杉
出来事
三つの金色に光っているもの R
願船寺
十七夜の雨の夜 ――ラマナ・マハリシ
茶の花
・地霊

草を待(にな)って
味噌搗き――キコリとサチコさんへ
秋の一日
青緑色の秋空の下で
一湊(いっそう)松山遺跡にて 三句
地霊(ぢれい)
新月
フウトウカズラ
私達の秘密
師走十四夜
サルノコシカケ
お正月
道の火
抱く
湯浴み
十二日目
卒業祝い――次郎に
夕方
春の夜
じゃがいも畑で
ゲンコツ花
うちわ
ラマナ・マハリシ
月夜
ある夜に
見たもの
拾ったもの
じゃがいも畑で
秋のはじめ その一
ウマオイムシの夜
秋のはじめ その二
土間
かやつり草
涙 その一
涙 その二
りすとかしのみ
ナガグツ
私は誰か
原郷の道
白菊
おこばな
浄雨
ジャンがくれた毛糸のマフラー
・水が流れている
食パンの歌――太郎に
春一番
スモモ 五句
真暗な山の啓示
ひとつの事実――スワミ・アーナンド・ヴィラーゴに
失われた縄文時代――純に
母と太郎
野いちごの花――兵頭昌明さんに
正座
十三夜
しみじみとしたもの
ことば――斎藤正子さんに
夜の山
はじかれた日
栗の実

水の音 その一 
水の音 その二
畑 その一
畑 その二
畑 その三
畑 その四
畑 その五
畑 その六
鹿の啼き声
紅茶を飲む
山で
一瞬 
綿入ればんてん
法服格正講話
千恵子先生
ナバ山で
阿弥陀佛十四本の大根
般若心経
夜明けのカフェ・オーレ
十七夜

焼酎歌

父と海 十五句
なぜ―――父に
たまご
スイッチョ
ひがんばな
秋 その一 
秋 その二
秋 その三
秋 その四
ミットクンと雲
ゲンノショーコ


草の生えている道 
草の道
この道
水が流れている その一
水が流れている その二
水が流れている その三 
暗い目

祈りのことば
ヴァジュラサットヴァ(金剛薩埵(こんごうさった)菩薩)
ひかり
大根おろし
つわぶきの煮つけ
春の朝 その一
春の朝 その二
桃の花とスモモの花と
スモモの花
春彼岸
五つの根(リゾーマタ)について
森について
月について
存在について
祈りについて

・縄文の火
存在について
矢車草 その一――松本碩之さんに
矢車草 その二
矢車草 その三
個人的なことがら
月夜 その一
月夜 その二――林謙二郎に
月夜 その三
月夜 その四
うづくもる
おわんごの海
梅雨入り
ガクアジサイ その一
ガクアジサイ その二
ひとつの夏
草刈り
畑にて その一
畑にて その二
静かさについて

月を仰いで
空気の中に
風――伊藤ルイさんへ 
いろりを焚く その一――亡き父に
いろりを焚く その二 
いろりを焚く その三
いろりを焚く その四
いろりを焚く その五
いろりを焚く その六
いろりを焚く その七
いろりを焚く その八
冬至
任意団体日本いろり同好会十ヶ条
真事(まこと) その一
真事(まこと) その二
真事(まこと) その三
二人

美しい椿(つばき)――ロレインに
椿(つばき)

芯(しん)
桃の花――寺田猛・久美子さん祝婚
桃の木
夜明け前
子守歌 (道人発熱)
道人の作った替え歌
・びろう葉帽子の下で
トッピョイチゴ
只管打坐(しかんたざ)
びろう葉帽子の下で その一
雲のかたち
かみさま
びろう葉帽子の下で その二
びろう葉帽子の下で その三
びろう葉帽子の下で その四
びろう葉帽子の下で その五
びろう葉帽子の下で その六
びろう葉帽子の下で その七
びろう葉帽子の下で その八――ルイさんに
びろう葉帽子の下で その九
びろう葉帽子の下で その十
びろう葉帽子の下で その十一――M・エンデと坂村真民さんに
びろう葉帽子の下で その十二
びろう葉帽子の下で その十三 
びろう葉帽子の下で その十四 
びろう葉帽子の下で その十五
びろう葉帽子の下で その十六
びろう葉帽子の下で その十七
びろう葉帽子の下で その十八
びろう葉帽子の下で その十九
びろう葉帽子の下で その二十
びろう葉帽子の下で その二十一
びろう葉帽子の下で その二十二
びろう葉帽子の下で その二十三
びろう葉帽子の下で その二十四――第三回バック トゥ ネイチュア コンサートに
真言(ことば)
満潮(みちしお)
神宮君の話 その一
神宮君の話 その二 
秋 その一
秋 その二
こおろぎ その一
こおろぎ その二
こおろぎ その三
こおろぎ その四
こおろぎ その五
暗闇

あとがき
別記
新装版あとがき


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