告別 岡村二一詩集

 1969年6月、金剛出版から刊行された岡村二一(1901~1978)の詩集。装幀は笠原互。著者は長野県下伊那郡竜丘村生まれ。

 

 大正十四年に処女詩集「幻想君臨」を出した後、新聞界に投じて詩を離れたまま、長い年月を過ぎたが、昭和三十一年四月から中村漁波林に誘われて、村松正俊、松村又一、南江次郎らと「詩人連邦」を出すことになって、久しぶりに故郷へ帰る思いだった。
 その前年の六月、一人息子を奇禍で失い感傷的になっていた折りだったからであろう。そういえば、漁波林との出会いも、亡児の導きみたいなものであった。
 ある日、銀座で、息子にそっくりの若者の後ろ姿を見つけ、思わず足がその後を追って街角を曲ると、
 「おう、岡村じゃないか」
と、呼びかける声、それが三十年ぶりの漁波林だったのである。
 一人子の亡きあと、短歌に傷心の思いをうちこんでいた妻も、三年後に急死した。朝、手乗り文鳥を抱いて玄関に見送ってくれたのが、昼ごろ急報で駆け戻ったときは、もう、ものいわぬ妻だった。つづいて故郷の母を、父をうしない、私の人生観に自ずから一つの角度が生じたらしい。
 人間の生と死、ひいては地球と宇宙の生と死について、私の詩想がひろがっていったのは、至極自然のなりゆきであったように思う。
 「詩人連邦」は十二年半、百五十号に及んで、昨年十一月いったん終止したので、この機会に一区切りをつけるつもりでまとめてみたのが本集である。
 村松と中村の過分の跋文で巻末を飾ることができたことを感謝する。
 なお、「愚経」の名で書きつづけてきた四行詩だけは、切り離して「人間経」と題し同時に金剛出版から発刊した。併せて批判を賜われば幸である。
(「はじめに」より)

 

目次

はじめに

  • 朝と夜
  • 海豚と女
  • 古木
  • 達磨
  • 落日の椅子
  • 富士
  • 告別 一ノ章
  • 告別 二ノ章
  • 告別 三ノ章
  • 告別 四ノ章
  • 告別 五ノ章:
  • 告別 六ノ章
  • お母さん
  • 妻への第一信
  • 少年
  • 武蔵野
  • 戒名
  • この石の下に
  • 君はくる
  • 白い花
  • さんま
  • 錆びるがままに
  • 空蟬 
  • ひとりで
  • 十字架よ
  • 神と神との対話
  • 生と死の間
  • 都会の窓
  • 復活
  • その日まで
  • 銀座
  • いやな奴
  • 草の葉
  • 老化
  • 白いバス
  • 地球は壊滅する
  • 私である私
  • 鼻クソの賦
  • 食慾
  • 留守番·
  • 六つの死
  • 殺風景な部屋
  • 水銀色の季節
  • 芳恵
  • 私が死ぬとき
  • 生殖
  • 二死满
  • 白雲
  • 小さい事件
  • 卒業式
  • 佐太郎菊
  • 待つ
  • 太陽と十字架
  • 樫の木
  • おきくの手紙
  • 夫婦
  • 新年
  • その人は詩人ではない
  • 隅田川
  • 一本道
  • 午前二時
  • 或る風景 
  • 昔の松
  • 夏の大砲
  • カビ
  • 秘密
  • 終着
  • 人間
  • おれは死にたい
  • その人に会えた日は
  • 手品
  • 再会
  • しんじつ
  • カラス大王
  • 養殖


古今独歩の詩聖 中村魚波林
天成の詩人 村松正俊

 

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