1979年7月、労働旬報社から刊行された広島原爆被害手記。編集は広島県朝鮮人被爆者協議会。表紙、カットは四国五郎。
目次
肉声を聞く 松本清張
スニのための鎮魂歌 許南麒
Ⅰ なぜこんな体になったか忘れんでほしい 李永淳
- 1 強制連行で炭鉱夫に
- i いわれた次の日にはもう家族と別れ
- ii 膝をまげ首までまげて穴を掘りま した
- 2 怪我人の列が一日中続いとった
- 3 原爆スラムにバラックをたてて
Ⅱ 劫火のなかに息子の焼かれるのをみて 戦争は私の家族何人を奪おうというのでしょう 辛福守
- 1 『皇国臣民』につくりあげられて
- i おしっこ”がいえずにおもらしする子供たち
- ii 日本に淡い期待をいだいてきたが
- 2 燃える体に学生服のボタンが三つ並んでいました
- i 屍の間でかろうじて息をして
- ii 死なんぞ――子供二人につづいて夫も
- 3 重なる惨劇――黒人兵に射殺された弟一家と兄の死と
- 4 生命あるかぎり
Ⅲ 犬のように殺されてたまるか 連行・逃亡・拷問のはてに 鄭順南
- 1 "鮮人"は豚以下だそうです
- i 畑にトラックでのりつけ連行することも
- ii 幾度かの逃亡失敗
- iii 豚に食わせる砂糖があってもおまえにはやらん
- 2 川もぎっしり死体で埋められてました
- 3 日本人のあなたに考えてほしい
Ⅳ 地獄絵のなかの差別 貴様!!! 朝鮮人のくせにギャアギャアいうな! 呉鳳寿
- 1 土地をとられて小作させてもらい
- 2 どこでも一番危ない仕事は朝鮮人
- 3 こんな目に遭うても――忘れられないあの言葉
- 4 一冊の本になるほどの苦難の末に
- i 食べ物で二人の子を失い
- ii 朝鮮を二度と植民地にしない子に育った
Ⅴ 売春婦に売られて 金末順
- 1 だまされて日本の遊かくへ
- 2 やっとつかんだ幸せを原爆に奪われて
Ⅵ 日本人はわしらを人間と思うとらんかった 南貴浩
- 1 生きているのが不思議なくらいいじめられた
- 2 生き残ったのは部落の一割
- 3 朝鮮人は朝鮮へかえれといいよる――さんざこきつかっておいて
Ⅶ 四六年間"楽しいこと"は一つもないです 鄭寿祚
- 1 一〇歳で子守に出されました
- 2 人間かお化けか
- 3 植民地なんかなかったら
- i 一人が泣いて四人を助けるつもりで
- ii 故郷へ帰って両親の墓まいりするまで生きたい
Ⅷ 一瞬の黒い熱い大波におおわれて 呉乙鶴
Ⅸ 雨が降っても学校に傘もってくるな――朝鮮ブタ 朝鮮ブタとさげすまれ 権重判
- 1 炭鉱を脱走した一七歳年上の主人と結婚
- 2 人間がイワシのように並べられ――爆風で白いかたまりの被爆者も
- 3 苦しみの倍加――子供への民族差別
- i 一家六人をかかえてヤミ米買い出し
- ii 学校でも就職でも
Ⅹ だれのためになんのために――どうしてもいっておきたい就職差別 文七権
Ⅺ おまえらみたいな奴 三厘でいくらでも手に入るんだ――逃亡生活・徴兵拒否のはてに 朴在寿
- 1 貧困と差別のなかで
- 2 逃亡生活・
- i 一年余の徴兵拒否の逃避行
- ii 徴兵検査――父連行の脅迫で
- 3 人間が木炭のように
- 4 日本人以下に扱われる理由はないのです
Ⅻ "新日本人"と口先ではいいながら 黄義錫
- 1 消えない思い出
- 2 戦争のために
- i 朝鮮人は劣等人間だからつき合えばバカになる
- ii ていよく日本政府の番犬につかわれて
- 3 どの人も裸同然でした
- 4 日本のためにのみ働かされてきたのに
- ⅩⅢ 広島の街が大地に叩きつけられたように 柳昌洙
- 1 太陽が黒くみえた
- 2 心のやすらぎがほしいんよね
- 3 子孫が二の舞をふんでは死にきれん
ⅩⅣ 歴史の底で死んだ母 鄭文玉
- 1 どの家庭も食べ物をあさる生活
- i 卑屈な運命をたどる旅立ち
- ii 夢を破られた父との再会
- 2 日本が手を上げるならもっと早ければ
- 3 せめて人権だけでも――新憲法下でも変わらないうち
- 4 いまも暗い歴史を背負い
ⅩⅤ 子供らに希望を語りつづけて――朝鮮人被爆教師として 朱碩
ⅩⅥ 土地・言葉・故郷・八人の肉親を奪われて 白昌基
- 1 全財産を奪われて
- 2 血のようなくやし涙――妻も兄も八人の肉親を失い
- i けん命に生きる人間のすべてを奪った原爆
- ii なぜ最も善良なものが最も過酷な運命を
- 3 放置された被爆者のために
ⅩⅦ 顔をみて"つける薬はない"と無視しました――事実を互いの民族がみつめ
- あってこそ 閔基鎬
- 1 一日も胸をはって生きられなかった少年の日日
- 2 原爆と空襲のなかで
- i 気づかずに積みあげた死体の脇に寝て
- ii むごい体験
- 3 日朝のほんとうの交流をつくるために
ⅩⅧ この世に生まれた価値を失わないために 金秀ⅩⅨ 被爆朝鮮人問題と