2014年6月、思潮社から刊行された池井昌樹(1953~)の詩集。装幀は高貝弘也。第22回萩原朔太郎賞候補作品。
三十五年間勤続した本屋が閉業を迎える。二十六歳から半生以上を同じ本屋で働かせてもらえた。有難いことだった。しかし詩はそれよりも遙か以前、中学二年の十三歳から書き始めていた。六十六冊の大学ノート清書稿をこの機に最初から読み返すうち、私の詩は、十三歳で詩を書き始める以前、詩的未生以前から噴出していることに気付いた。爾来ほぼ半世紀に渉る間断ない営みその悉(ことごと)くが、一篇の例外もなくそうであったことに。かつての高校受験落第から今日の勤務終焉に至るまでにも様々な四苦八苦を様々に体験したが、四苦八苦に沿うてのみ詩は粛々と奔流し続けた。詩を知る以前、四苦も八苦もないあの暗黒の未生領域から。何もかもお見通しのように。
(「不思議 あとがきにかえて」より)
目次
- 千年
- 一夜
- 秋刀魚
- 手の鳴るほうへ
- 草を踏む
- 幼心
- 喜望峰
- 柳河行
- この道は
- 蜜柑色の家
- 兜蟹
- 月
- 内緒
- 忙
- 秋天
- 冠雪富士
- 桃
- からたちの花
- 産土行
- 侏儒の人
- 異装の月
- とんちゃんのおうどんやさん
- 肩車
- 揚々と
- 夢中
- 弥生狂想
- 運命
- 未来
- 千両
- 白洲
- 企て
- 人事
- 星空
- 赦されて
- 日和
- 人類
- 野辺微風
- 草葉
- 雲の祭日
- 夕星
- 晩鐘
- 夢
- 封緘
- 寒雀
不思議 あとがきにかえて