1988年4月、詩学社から刊行された金子美保の第1詩集。装幀は内山朋子。刊行時の著者の住所は調布市。
この詩集にまとめた詩は、一九八六年から八七年にかけて書いたものです。
一番古いのは、本のタイトルにもなった「ポートレート」で、これは八六年の夏に書いた記憶がありますが、その半年以上前から断片をノートに書いたりしているので、自分としては時間を費やして考えた詩だといえます。
直接には私の年上の従姉の死を題材に、彼女の死を私なりに解釈して詩にしてみようと思ったのですが、今読んでみると当時の自分が、まるで「全部わかっていながら手をこまねいて見ているしかない」とでもいうように、悔悟じみた重苦しい感情として思い出されます。それは恐らくは、その従姉に向けた思いとは別のものでした。
しかし、全体に詩のなかの自分の状態を突き放して眺めてみると、この二年間のある若者の生活(若者といっても私は二十六歳の成人ですが)、絶望や、希望や、孤独といったものが、わりあいナマな形で詰めこまれているように思います。
ところで、私が詩を意識して書きはじめたのは、二十歳前後だったと思いますが、ふり返ってみると私は、詩と、何やら詩的なものには何といっても大きな影響を受けました。
それで、いつか自分の詩集をつくりたいと思うようになり、そのことは私の強いあこがれだったのですが、今回自分の詩集を持てることになり本当にうれしく思います。
(「あとがき」より)
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あとがき