1991年8月、土曜美術社から刊行された江島その美(1944~)の第4詩集。装幀は司修。「21世紀詩人叢書」5。
きらきら光っている水あそびの水、ままごとあそびの水…
水に触れ、水に濡れていて、水を意識しない幼いこどものしぐさを、「美しい!」と、おもわず立ち止ってみとれてしまうことがあります。
その場を離れ、再び歩きながら、みごもった時の水を宿しながら水を意識しないなごりが、まだ、私の内でゆれていることに気づきます。
そのように、――再び歩きながら――の年代に、私の詩の現在も、生も、置かれているようです。此度の詩集は、既刊の『水枕』『水の妊婦』の、水の流れを受けるかたちで、この二年間に、日記のように書き下ろしていた未発表作品の中から、私の生にかかわった水を、手の中に結ぶようにして選んだものが殆どです。解説を書いてくださった伊藤桂一先生は、創刊から終刊までを所属した「野火の会」で、あたたかく、時には、きびしく、ご指導を受けた先生です。
学生、社会人、結婚、母と、詩を通して先生のおそばで年代を重ねてきた私にとりましては、詩を超えて見守り、励ましてくださる、人生の師でもあります。
また、この叢書への参加をご承諾くださった小海永二先生には、第一詩集『合歓』出版の折から、ずっと地方で書いていた私へ、「広く、外へ向かって書く勇気を」と、おことばをいただいてきました。
美しい装幀で飾ってくださった司修先生、細かい配慮をしてくださった中村不二夫様、編集でお世話になった丸地守様、加藤幾恵様。皆様方のお力添えで、第四詩集を編むことができ、ほんとうにうれしく思います。
(「あとがき」より)
目次
- 水の残像
- 水枕
- 水の虹
- 海などみえない
- 夕立
- 長崎の水
- 無限の水
- 駅
- 囮の水
- ゆれる喫水線
- 水の器官
- 水の形象
- ゆめ
- 水の貌
- 湯気につつまれ
- 雨あがり
- コロンボの水
- ボンベイの水
- 水の色
- 水に抱かれて
解説 伊藤桂一
あとがき